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しぶしぶ料理に手をつけるユーリ、ひとくち食べるとパクパクとフォークを進めた。
しかし、目はロイドを睨んだままだった。
「(兄さんったら、ずっとロイドさんを睨みつけてます…確かに、姉さんをとられたのは少し寂しいですけど…)」
ヨルの顔をちらりとみるA、ヨルも目が合い優しく微笑み返した。
「(姉さんが笑っていられるなら…私はそれでいいんです)」
Aは、幼い日を思い出していた───。
両親のいなかった3人の兄妹は、生活も貧しくヨルは遅くまで働いていた。ある日、ユーリとAが風邪をひき、熱を出してベッドで寝ていたところ、姉であるヨルは山まで薬草を取りに行き、なぜか血まみれになって帰ってきたのである。
「(あのときの薬草のジュース、すごく独特な味でしたね…)」
Aが、そんなことを思い出していると、ユーリがワインを取り出し二人へ渡していた。
「これはご丁寧に」
ロイドが受け取り、ワインを注ぐ。ふと、Aは気になったことを聞いた。
「そういえば、姉さんたちはどこで知り合ったんですか?」
「(ナイスだA!さすが我が妹!)」
心の中で喜ぶユーリ。ロイドがボロを出さないかと探りを入れる。
「三番街のブティックです」
「知らない人がジロジロ見てくるのでうわぁ〜〜って」
「ああいやあまりにキレイな方でしたので…何度かお食事を重ねるうちに意気投合しまして」
Aはワインを飲みながら、2人の話を聞いていると、ユーリがすかさず口を挟んだ。
「…その食事はいつ・どこで・何回くらい?店の名前は?何度目の逢瀬で交際へと至ったのですか?結婚の決め手は?」
「えっと…」
「に、兄さん……?」
ロイドとAが困惑している間もユーリは止まらなかった。
「二人は互いに何と呼び合っているので…?」
「え…?まあ"ヨル"と」
「ねね姉さんはまさか"ロイロイ"とか"ロッティ"とか…」
暴走する兄を心配し、Aは立ち上がると、ユーリはワインを瓶ごと飲み何故か興奮している。
「うおおおロッティ!!チクショォォォ!!!」
「ふ…普通に"ロイド"さんですよ!」
「兄さん!落ち着いて!飲み過ぎですよ!」
「大丈夫?ほら水」
水を持ってきてくれたロイドに、さらに睨みをきかすユーリであったが、再びチクショォォォ!!と言いワインを流し込む。
「(これでは、せっかく姉さんの結婚祝いに来たのに…台無しになってしまいますね…)」
後日改めて、謝罪に来ましょう…そう胸に誓ったAだった──。
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作者名:神永 夕陽 | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/470/mushroom037/
作成日時:2022年6月1日 12時