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「遅くなってしまいましたね…」
「姉さんなら、許してくれるさ」
そうですね、とAは微笑み返事をする。
フォージャー家の扉の前に着いた2人は、深呼吸をしてブザーを鳴らした。
ガチャ、と扉が開きユーリとAは貼り付けたような笑顔を作った。
「やあはじめまして!弟のユーリです!」
「妹のAです」
そして、ロイドとヨルも同じように貼り付けた笑顔で"いらっしゃい!"と迎える。
ロイドとユーリが握手を交わす。2人とも笑顔のままだが、心の中では欺き合い、探り合う戦いが始まろうとしていた。
「あ、コートと荷物お預かりしますよ!」
「いえ大丈夫ですありがとうございます」
「兄さん!」
敵対心剥き出しの兄の言葉にAは冷や汗をかく。
「……簡単な料理でよければすぐ用意しますのでくつろいでください」
「ありがとうございま「お気遣いなく」
Aが返事をかえすのを遮るようにユーリが言った。そんなユーリをみて、ヨルは"緊張しちゃって"と呑気に言っている。
ヨルに話しかけられてにこにこするユーリ、そんな姿をみてAはホッとした───。
2人は持ってきた花を渡し、ヨルは花瓶に花を飾る。
「お花ありがとうユーリ、A」
「うん…でも姉さん、ボクたちはまだこの結婚を認めたわけじゃない」
「ちょっと兄さん、そんないきなり…」
唐突に話を切り出すユーリに、Aが焦って制するもユーリは続ける。
「だいたい弟のボクや、妹のAに1年も黙ってたってどういうことなの?」
"ちゃんと答えてくれないと納得できないよ!"と言うユーリに、Aはため息をついた。
(こうなっては、姉さんの言葉しか聞こえないですしね…)
「そ…それは、わ…忘れてたからです!」
パリンッとキッチンの方でなにかが割れる音がした。ユーリもAもキョトンとしていたが、ヨルは自信に満ち溢れた表情だ。
「え…うん…えっと…」
「忘れてたんです!」
「姉さんったら、おっちょこちょいなんですから」
ふふっと笑うAに、ごめんなさいと笑って返すヨル。
「ほら、兄さんも姉さんがそう言ってるんですから」
「…そうだね、姉さんが忘れてたなら仕方ないか!」
すると、そこにロイドが料理を持ってきた。
「おまたせしました」
「わあ!おいしそうです!」
「ロイドさんの料理はすっごく美味しいんですよ!」
ユーリが舌打ちをしたが、Aは聞こえないふりをした──。
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作者名:神永 夕陽 | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/470/mushroom037/
作成日時:2022年6月1日 12時