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「そんな感じだったっけ？」
渡「まじでキンキンに冷えたいろはすだけは絶対に忘れない」
「はは、それもいい思い出じゃん」
いい思い出って片付けられるくらいにはお互い大人になったのかなと思う。
渡「そういえば、何で俺だけ下の名前で呼んでんの？」
あの喧嘩以来、私は2人でいるときは翔太くんと呼ぶようにしている。
特に理由はないけれど、一種の罪滅ぼしというか、もう仲が悪くならないようにっていう願掛けというか
「ん？岩本くんのこともたまに照くんって呼んだりするし、ジーコは…あだ名か」
「まぁ、言われてみれば翔太くんだけだね」
渡「だろ？」
「あー、でも2人でいるときしか呼んでない」
渡「そうなの？」
「うん、テレビとか雑誌は渡辺とか渡辺くんって呼んでるし」
渡「あー、たしかに」
「メンバーの前とかは、なべ？」
渡「それ意味あんの？」
「ないんじゃない？」
渡「まぁ、俺だけでいいよ」
これは聞かないふりしといたほうがいいやつかな、なんて思いながらハイボールを胃に流し込む。
明日も朝から通し稽古と昼公演があるからということでちょっと早めに帰路に着く。
家に帰ってから翔太くんの言葉を思い出す。
翔太くんは、きっと私にそんな気持ちは抱いていない。
でも、「俺だけでいいよ」なんて向こうにそういう気持ちがなかったとしても大抵の女なら好意があると思うだろう。
恋愛禁止、ましてや女子禁制のジャニーズに入ったからそういうのには気をつけてきた。
好意を持たれていても気づかないふりをしろ、そもそも好意を持たれるな。
そうある人から口うるさく言われてきたから。
耳にタコができるほど言われてきたから未だに言われるのは正直だるいしめんどくさい。なんて考えていたらちょうどその人物から電話がかかってきた。
「もしもし、どうしたのふっかさん」
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作者名：月 | 作成日時：2021年3月2日 19時
