～小さな世界～【永瀬廉】２ (ページ3)

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ren side…

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柔らかい唇からそっと離れて

頬を染めたAの顔を間近で眺めた。

夏の夜風に靡く髪は

いつもよりどこか大人っぽくて

そそられるものがあった。

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「……寒くないですか？」

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沈黙を誤魔化すように

わざと目をそらして言うA。

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引けば離れていきそうで

近づき過ぎると壊してしまいそうで

自分をコントロールするので精一杯

溢れ出そうな感情を抑えるのが難しくて

こんなに忙しい感情は初めてで

どうしたらいいのか分からんかった。

触れるたびに

俺はAの顔色を伺った。

唯一、

体温を感じられる俺の右手は

Aの頬に触れ

首筋に触れ

肩に触れ

腕に触れ

そのままそっと下ろして

Aの小さな手に自分の指を絡ませた。

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「……」

『……』

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全部が欲しくて

隙間なく抱きしめたくて

俺の物だと

二度と無くならない物だと

証明みたいなものが欲しくて

不安で、どうしようもなくて

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『……もう一回しよ』

「……」

時間が許す限り

俺はAの唇に縋るようなキスをした。

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俺の両腕に置いていたAの手は

ゆっくりと首に回してきて

身体と身体が一気に近くなる。

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『……A』

「……ん？」

キスの合間に名前を呼び、

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永瀬『…俺の彼女になって』

「………」

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縛り付けるような

情け無い言葉をAに伝えた。

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「…はい。」

永瀬『……』

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俺の止まる事ないキスを

嫌がる事なく全て受け入れてくれた。

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逃げられないように

壊してしまわないように

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すでに破裂しそうな想いを

グッと自分でコントロールしながら

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夏の夜が

こんなにも穏やかで

胸をときめかせるものだと

俺は初めて知った。

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俺は初めて思った。

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「てか、いつの間に車椅子乗れるようになった？」

『…んふふ、…ん？』

「……」

『ふふ、そんな怖い顔せんといて』

「…もぉ、…馬鹿。」

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こんな世界も悪くないと＿＿

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