～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ8)

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今日は夜間勤務だ。

たまたま海人も同じシフトだったので

ダラダラと世間話をしながら消灯準備を始める。

髙橋『永瀬さんのお見舞い、誰も来ないね』

「うん」

この病院に永瀬さんが入院してから約1週間。

しかし永瀬さんのお見舞いに来る人は

1人も現れなかった。

「永瀬さんって、ちょっと不思議が多いよね」

髙橋『え、今更？』

「え？」

髙橋『あんなの、闇でしかないでしょ』

「……」

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そして、

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髙橋『…あの怪我も本当は自ら、』

「やめてよ！！」

髙橋『…っ！！』

私は思わず大きな声で

海人の言葉を遮った。

髙橋『……』

「……」

目を丸くして固まる海人に

“ごめん”とだけ伝えた後、

私は逃げるようにその場を後にした。

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＿＿あの怪我も本当は自ら、

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やってしまった

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海人、驚いてたな。

そりゃ急にあんな大声を出されたら

ビックリするよね。

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「…後で、ちゃんと謝ろう。」

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勝手に重ねてしまう自分の過去。

頭をブルブルと振り

無理矢理それをかき消した。

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オペ後の患者様の経過観察

点滴の交換、夜の検温、保清、シート交換を終え

未だ気まずい空気が漂う

ナースステーションに恐る恐る顔を出す。

「…み、見回り行ってくるね。」

髙橋『A。』

「…？」

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ナースステーションで

暗い顔をしてトボトボとこちらに歩いてきた海人は

私にある物を差し出して来た。

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髙橋『…さっきの発言は最低だった。ごめん。』

「……」

それはアメちゃんだった。

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「…ありがと。」

髙橋『もう、怒ってない？』

「…うん。私も、ごめん。」

髙橋『ううん。俺が悪いから。』

ギュッとそのアメを握りしめて

わだかまりを溶かすように私が小さく笑うと

海人もかすかに微笑み返してくれた。

「じゃ、行ってくるね」

髙橋『うん。』

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