～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ23)

今日:28 hit、昨日:11 hit、合計:551,044 hit

23 ページ23

.

髙橋『あれ？A、帰らないの？』

「……察してよ」

髙橋『…あっ、レポート。』

今日のミスレポートを机に広げて

私は頭を抱えていた。

髙橋『手伝ってあげようか？』

「…とか言って隣でお菓子食べてるだけでしょ」

髙橋『アッハハ！』

「でも、ありがとう！大丈夫だから帰ってね！」

夜勤でもない私は

勤務時間外に隅っこの方でレポートを書く。

ミスが起こった理由や

今後自身が起こさない為の改善策

院全体での改善策を沢山の文字で埋めていく。

.

.

ふと時計を見ると19時。

そろそろ消灯準備を始める頃か。

.

.

「書けたぁーー…」

グーッと伸びをして

大きな欠伸をする。

.

師長にレポートの提出をして

その時も淡々と怒られて

ぺこぺこと頭を下げて

「…失礼します。」

クタクタになりながら部屋を出た。

.

外はすっかり暗くなっていた。

.

「さ、…帰ろ。」

.

ナースステーションにいる看護師に

お疲れ様でした

とだけ声をかけ、その場を離れようとした時

ナースコールが鳴った。

.

「…！！」

それは、永瀬さんの部屋だった。

.

“永瀬さんじゃん。”

“誰が行く？あの人冷たいから嫌なんだよねぇ”

夜勤の看護師達は

ダラダラとじゃんけんを始める。

負けた人が行くとかなんとか。

その様をグッと拳を握りながら眺める私。

どうしても我慢ならなくて

耐えられなくて

「わ、私行きます！！」

思わず手を挙げて言った。

え、いいの？

みたいな顔をする先輩に

勿論文句は言えなかったけど

顔は恐らく歪んでいたであろう。

.

.

私は、急いで永瀬さんの部屋へと向かった。

.

.

ガラガラ～

「永瀬さん、どうされましたか？」

永瀬『…っ！』

驚いたように目を丸くして

こちらを見る永瀬さん。

ベットの方へ近づいて行く私を

永瀬さんは不思議そうな目で追う。

.

「お手洗いですか？」

永瀬『A、今日は夜もおるん？』

「え？」

要件を伝えるよりも先に

そこがどうやら気になったらしい。

「…あ、いやその仕事が長引いてしまって。」

永瀬『……』

「ふふ、だからこの後ちゃんと帰りますよ！」

.