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黙ったまま部屋に戻ってきて
ゆっくりとベットに移動させてあげる。
私はちょっとだけ怒った顔をして
永瀬さんを見つめた。
「次あんな事しようとしたら、」
永瀬『……』
「私は永瀬さんの担当から外れます。」
永瀬『……』
そう言うと、一瞬だけ揺れた瞳。
不安げに伸びてきた右手は
また私の手をギュッと握る。
こういうのも、
本当は警戒するべきなんだろうけど。
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永瀬『…分かった。もうせえへん。』
「…絶対ですよ？」
永瀬『絶対。だから離れんといてな。』
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うっ…
膝の力が抜けそう。
そんなキュルキュルな目をして言われたら
なんでも許してしまいそうになる。
「…わ、分かりました。」
永瀬『……』
ほら。
すぐ許したよ私。
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＿＿患者さんと恋に落ちました〜、的な？
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このタイミングで
海人のあの言葉が過ぎる。
ギュッと手を握られて
互いに見つめ合うこの状況は、
確かにそう思われても仕方がない。
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「じゃあ、また夕食の時に来ますね。」
永瀬『うん。』
「はい。」
永瀬『うん。』
「あ、ちょ、手を離して頂けませんか？」
永瀬『いや。』
「はい？……え、ちょっと、永瀬さん」
永瀬『離れへん言うたやん。』
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永瀬さんはとても素直な人だった。
案外話してみると不器用だけど優しくて
正直で、真っ直ぐで、子供っぽくて
「…いやそれは、そういう意味じゃなくて」
永瀬『……嘘つき。』
「はい！？」
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そして、
永瀬『んふふ、冗談。早よ行って。』
「……」
ちょっとだけ可愛らしい一面もあって、
私はきっとこんな忙しい彼に、これから
ブンブン振り回される事になるのだろう。
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永瀬『…頑張ってな。』
だけどそんな毎日も悪くない。
むしろちょっと楽しみかも。
「…ありがとう…ございます。」
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“有りがちな展開”
知らず知らずのうちに
足を踏み入れようとしていたなんて
この時の私は、
勿論気付くはずもなく。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年10月19日 11時
