～小さな世界～【永瀬廉】 (ページ42)

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永瀬『どうでもいいねん俺。

親父が犯罪者だろうと、犯罪者の息子って

冷たい目で見られんのも、もう慣れたし。

誰になにを言われても、…どうでもいい。』

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永瀬『明るい家庭が羨ましいとも思わんし

普通が良いとも、今がいいとかも何もない。』

真っ黒な空を見上げて話す永瀬さんの言葉は

“どうでもいい”

期待のない、とても悲しいものだった。

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永瀬『…どうでもよかった』

永瀬さんのキラキラと揺れる茶色い瞳に

少しだけ水が足される。

永瀬『……どうでも…よかったのに』

次第にその声は小さく震えて

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永瀬『…Aの手は…あったかいな…』

「……」

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私の手を大事そうに包み込み

永瀬さんは眉を下げて言う。

永瀬『…なんでAは…』

「……」

永瀬『…俺なんかに笑ってくれんの？』

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震えた声は

今にも弱く消え入りそうで

永瀬『…なんで…俺なんかに優しくするん…？』

「……」

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永瀬さんの右手が私の背中に回り

ギュッと私を強く抱きしめる。

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耳元に霞む悲しい声はこの後も続いて

永瀬『…Aにだけは…』

「……」

永瀬『…嫌われたくないとか…思ってまうやん…』

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永瀬さんの涙声が、

胸をギュッと締めつけた。

自分の止まらない涙

それを拭く事も忘れて私は、

永瀬さんの寂しい体を丸ごと包み込んだ。

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永瀬『…しんどい』

「……」

永瀬『Aがおらん日は…息がしにくい』

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永瀬『……』

「……」

永瀬さんの崩れてしまいそうな心を

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永瀬『……何処にも…行かんといて…』

「………」

壊れてしまいそうな心を、

私はそっと優しくすくい取る。

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私はゆっくりと体を離す。

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深く傷付いた

まるで子犬のような顔をした永瀬さんと

視線を重ねた。

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私は両手で永瀬さんの頬を包み込む

そして、

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「永瀬さん、…目瞑って下さい。」

永瀬『……』

涙目の永瀬さんは

キョトンと不思議な顔をして首を傾げる。

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「…いいから目、瞑って？」

永瀬『……』

そう言うと

永瀬さんは大人しく瞼を閉じた。

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