～幼馴染と私～【永瀬廉】 (ページ7)

今日:20 hit、昨日:69 hit、合計:745,931 hit

7 ページ7

.

「紫耀。」

平野『別に教えたらいいじゃん。』

「はい？」

平野『連絡先。』

私の手首を紫耀に掴まれながら

売店までの廊下をトボトボ歩いていく。

平野『別に俺らが無視すりゃいいんだし。』

紫耀は昔から

私がこういう目に遭っている事を知っている。

その度に、

平野『あれだと、お前が反感買うだけだろ。』

反抗するな、と言う。

紫耀は特に心配性だから、

私に何かあるよりかは、

という意味で言っているのは分かっている。

でも、

「…嫌なんだもん。」

平野『……アホか。』

紫耀に引っ張られた自分の腕を見つめながら

私は急に立ち止まる。

平野『ぉ…っと、なに！？』

当然、

私の腕を掴んでいた紫耀も急ブレーキがかかり

驚いたように目を丸くして私を見た。

「紫耀は、教える？」

平野『なにが？』

「私の連絡先…聞かれたら教える？」

平野『………』

ほんの少し、沈黙が続く。

でも、それはすぐに

“ごめん、聞かれた事ないから分かんない”

と言って紫耀は

わざと頬をくしゃくしゃにして笑う。

「もぉ！…聞かれたらって話じゃん。」

平野『ハハハッ、拗ねるなって。』

「どうせ私はモテませんよーだ。」

紫耀を置き去りにして

私はまた廊下を歩き出すと

.

平野『ブッ飛ばすんじゃない？』

後ろから恐ろしい言葉が耳に届く。

「…はい？」

平野『Aの連絡先を聞かれたらでしょ？』

「………。」

ゆっくりと私と距離を縮めて

.

平野『教えない。』

「……。」

平野『Aには指一本、触れさせないよ俺。』

紫耀の

片耳のピアスがきらりと光る。

平野『これで満足？』

紫耀の逞しい手のひらが

私の左頬をふわりと包み込む。

私を見つめる紫耀の目は、

いつもの可愛い子犬じゃない。

今の紫耀はまるで

.

永瀬『なんしてんの。』

「……！！」

.

廉が現れると瞬時に

離れていく紫耀の大きな手。

平野『別に、売店行くとこ。』

「………」

永瀬『あっそ』

“早く行くよ”

と言う紫耀の声に黙って私達もついていく。

.

紫耀も、そして廉も私も、

何もなかったかのように振る舞うのが

とても上手だ。

.