～ネコ日和～【永瀬廉】２ (ページ14)

今日:19 hit、昨日:9 hit、合計:566,397 hit

64 Ren side ページ14

ren side…

『でも、本間全部楽しかったよ俺は。』

「…良かった。少しは、お暇できた？」

『少しどころじゃないよ。』

お暇とか言うて

ちゃっかり大恋愛してもうたなぁー、俺。

まさかやったわ。

.

そんな事をボーッと考えていると

Aはいきなり俺の胸元に甘えるように

額をピタッとくっつけてきた。

『なに、どしたん。』

「ねぇ、廉」

甘ったるい声で俺を呼ぶAを

優しく腕で包み込む。

すると、

『ん？』

「廉は、逃げてなんかないよ。」

.

.

眠りに入る寸前のAの声が

すんなりと耳に届く。

「…だから、大丈夫。」

俺の背中をポンポンとされながら

「…廉をちゃんと見てくれる人は、居るからね。」

『………』

そして、

俺の返事を聞くまでに

背中にあったAの手は力尽き

そのまま、深い眠りに入ってしまった。

.

『…寝んなよ。』

.

長いまつ毛、規則正しいAの寝息

未だ背中に回された腕、小さく丸まった身体

これごと全部、持って行けたらとか

思ってまうやん。

.

手も足も全部Aに巻き付け

俺はいつも以上にきつく抱き締めて

『…A、好き。』

それだけ言って、俺は目を閉じた。

.

.

.

.

次の日

.

.

朝目覚めると、

俺の隣に、Aの姿は無かった。

『…あれ、俺寝すぎた？』

眠たい目を擦りながら

ゆっくりと立ち上がる。

.

『Aー？』

.

.

庭、2階、トイレ、風呂、縁側

何処にもAの姿は見当たらんくて

俺はボサボサの髪のまま

急いで自転車に乗り、Aの田んぼに向かう。

.

『……ハァ…ハァ……A…』

.

だだっ広い田畑に

人の気配すらもなく。

.

俺は呆然と立ち尽くしながらも

この状況を徐々に理解し始める。

お昼になっても

夕方になっても

そして、夜になっても

.

.

結局Aは、

家に戻ってくることは無かった。

Aは、

.

＿＿廉へ

今までありがとう。
元気でね。
さようなら。

Aより＿＿

たったそれだけの文章を綴った手紙を

テーブルに残し、俺を置いて出て行った。

.