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私は、この村を出て行く準備を始めた。
母と住んでいたこの村に
甘えて縋り付くのはもう辞めようと。
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「今年の薪は、これくらいでいっか。」
廉が出て行ってから
ある程度の時が過ぎ、今は10月の秋。
相変わらず、携帯もテレビも無いここでは
廉の活躍を目にする事はないけれど、
きっと忙しい毎日を過ごしている事だろう。
去年の今頃は、
廉と一緒に薪割りをして、クルミを割って
栗拾いをして、縁側で本を読んで、稲を収穫して。
なんだか、
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「…もう、遠い昔の事みたい。」
廉と居た1年間は私にとって、
幻のような、夢のような、そんな日々だった。
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今も、
廉に会いたいと不意に思う事がある。
「あ、…ふふふっ、また来たのかぁ？イネ〜」
例えば、
こうしてイネを抱きかかえる時とかね。
＿＿ハハハハッ、そう、稲。稲ちゃん！
＿＿嫌だよねぇ？そんな名前。
＿＿はぁ？嬉しい言うてるわイネも。
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「…変な名前、付けられちゃったねぇ〜」
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何もかもが上手くいかなくて、
怖くなって都会から逃げてきた私。
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でも廉は今、
「…そこで、頑張ってるんだよね。」
ちゃんと逃げる事なく、
大きな世界で今も向き合いながら
頑張っているんだよね。
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怖くないわけじゃない。
いや、むしろ恐怖しかないけどさ。
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でも、
今の自分は、
やっぱり好きになれないから。
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？『ねぇ…まじで道合ってんのぉーー…しょお〜』
？『たぶんね。マネージャーが地図書いてくれてぇ』
？『…本当絵へたすぎ…まじ信用ない、その地図…』
「……っ！？」
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なになになになに…！？
突然、妙に賑やかな声が
どんどんこちらに近づいてくる。
「…あっ、…イネ！」
イネも、その騒がしい声に驚いてしまったのか
ピョンっと私の腕から逃げて行った。
姿はまだ見えない。
ただ、明らかにこちらに近づいて…
そして…
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「……っ！！」
金髪…
茶髪…
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「…ヤクザ」
グラサンをかけた
明らかに怪しい派手な二人。
？『あっ！』
？『あそこに誰か人居るぅー！』
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私は思わず、
近くにあった斧を両手で持ち上げた。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月19日 1時
