47 ページ47
.
廉は、下を向いて大きく深呼吸をした。
そして、
永瀬『ちょっと歩いてくるわ。』
「……えっ、…待っ」
永瀬『一人にして、お願いやから。』
.
廉は私に見向きもせず立ち上がり
小さな歩幅で不安定な雪の上を歩いて行った。
.
廉をあんな風にしたのは、
きっと私だね。
限界になるまで、
廉はずっと耐えて我慢して。
ごめんなさい。
でも、もう私も結構限界だったりするんだ。
ただ、雪の上は嫌だけど。
.
.
私は勢いよく立ち上がり、
長靴がズボッと雪にいちいち埋もれながらも
まだ見えている廉の背中を追いかけた。
.
.
1メートルほど先を歩く廉の後ろを
黙ってついていく私。
「……。」
永瀬『一人にしてって言うたやろ。』
一向に振り向いてはくれない。
口調も、いつもより少しだけ強くて。
永瀬『あんなん、またされたいん？』
「あれはヤダ。」
永瀬『じゃあ来んな。』
真っ白な雪の上に、
私達の足跡だけが後ろにどんどん残されていく。
次第に二人の体温も奪われて息が乱れ始める。
「帰ろ？」
永瀬『Aだけ帰れば。』
「…それは嫌。」
私は、大きく歩幅を広げて
廉の服の裾を引っ張った。
それと同時に廉も歩く事をやめて
前を向いたまま、ようやく立ち止まってくれた。
「…一緒に帰ろう。」
永瀬『……。』
「このままだと、二人とも風邪引いちゃうよ？」
大人しくなった廉の腰に
私は腕を巻きつけて後ろから抱きしめた。
.
永瀬『言うとくけど』
「え？」
.
廉は低い声でこう言った。
永瀬『あと1ミリも俺、理性持ち合わせてないで。』
「……。」
.
永瀬『それが嫌なら』
.
「嫌じゃない。」
.
.
.
永瀬『……。』
.
私も、もう抑えられなくなっちゃった。
丁度良い距離感だなんて、無理。
「…嫌じゃないよ。」
永瀬『……。』
「あの日だって…別に私は…」
すると、
腰に巻きつけた私の腕をそっと離して
廉はこちらに身体の向きを変える。
永瀬『……。』
廉の顔を見上げようとした時、
私の身体を引き寄せて、ギュッと抱きしめられた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月15日 10時
