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仰向けだった廉は
私の方に向けてゆっくりと身体を横にする。
廉は、肘をついた自分の左手で頭を支えながら
私の顔を上から眺めてくる。
相変わらず、右手は握られたまま。
永瀬『あかん?』
「……。」
私を真っ直ぐに見つめる廉は、
いつもと違う顔をしていた。
だから、いつものトーンで断れなくて
つい黙り込んでしまう。
それをいい事に、
握られた手はスルッと離れていき
そのまま廉の手は、今度は私の頬を優しく撫でる。
それだけで
自分の身体の芯が火照り始めるのが分かった。
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永瀬『キスするだけやから。』
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キスするだけ。
この魔法の言葉に、ずるい言葉に
いよいよ私は、抵抗する事をしなくなる。
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頬を撫でた廉の手は
そのまま私の耳の後ろに移動して頭を支えた。
廉は、ゴクっと喉を動かして
私の様子を確認しながらも、
じんわりと顔を近づけてくる。
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でも、
お互いの息が吹きかかる程の距離になった途端、
廉はピタッと止まる。
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永瀬『…いいねんな?』
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断れない雰囲気を作ったのは
廉のくせに。
ギリギリの所で
最後の確認をしてきた廉に、
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「…キスだけでしょ?」
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それだけ伝えて
私は、ゆっくりと瞼を下ろした。
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とても静かな数秒間。
じっとそれを待つ時間は、
とても長く感じた。
私はどんな想いで、
廉はどんな想いがあるのか、
それはあえて何も言わないけど、
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ゆっくりと降りてきた廉の唇。
優しく重なったお互いの柔らかい熱は
なんとなく通じ合う物があった。
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永瀬『……。』
「……。」
程よく離れた唇に、
私は薄く目を開けると、
熱い視線で私を見つめる廉がいた。
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そしてまた、
廉は私にキスをする。
すぐに離れて、それをまた二度、三度と繰り返す。
徐々にそのキスは、深みが増し始める。
唇を咥えるようなキスに変わり
次に覆うようなキス
お互いの乱れた吐息に
私達のキスはさらに加速する。
ヌルッと当たる廉の舌に
私も優しく絡ませる。
次第にどちらの舌なのかが
もう分からなくなる程
私達はキスに夢中になった。
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作者名:ayu | 作成日時:2020年9月15日 10時