～ネコ日和～【永瀬廉】 (ページ36)

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「…え？」

永瀬『んふふふ、まぁ東京だけちゃうけどな。』

廉は天井を見ながら笑う。

でも、その声はいつもより少しだけ低くて

なんだかちょっと心配になる。

永瀬『見た事とか、耳にする事ってさ

全部が本物とは限らんやん？

絵も写真も人間の言葉も全部。』

いつも聞かない声のトーンで話す廉の言葉には

とても重みがあって、思わず黙ってしまう私。

永瀬『んふふふ、まぁ…

あんなにネットが普及してもうたら

なにが嘘でどれが本間かなんて分からんもんな。』

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私はじっと廉の横顔を見つめる。

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永瀬『俺は、それが怖くて逃げてきた。』

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きっと廉の本心は

もっともっと深いところにあるはず。

だけど、それを言っちゃうと

自分が壊れてしまいそうになるよね。

もう、それ以上言わなくていいよ。

私は上半身を起こして、

ゆっくり立ち上がる。

永瀬『…A？』

そして何も言わず

自分の布団を廉の方へと近づけた。

永瀬『………』

私の突然の行動に

目を見開いて驚く廉をよそに

私はまた布団の中に身体を潜り入れた。

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隣を見ると

さっきより随分と近くなった廉の顔は

未だ驚いた顔をして口を半開きにしている。

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「…手、繋ぐ？」

永瀬『………』

廉は完全に固まってしまったようだ。

仕方ない。

何も言わないなら、と

私は自分の布団の中にあった手を

廉の布団の中へ勝手に忍びこませた。

すると案外すぐ近くに廉の温かい手があって

そっと指で触れてみると、

何も言わずにギュッと握られた私の手。

永瀬『……ズルいわ、こんなん。』

珍しい私の行動に、

廉は驚きがなかなか隠せない様子。

「ねぇ、廉？」

永瀬『ん？』

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ギュッと握られる手を、

私も優しく握り返す。

「世の中には、嘘も沢山あるけどさ。

本当の事は、全員にわざわざ知ってもらわなくても

誰か一人の人には、信じて貰えるといいね。」

廉の話とは、

全く関係ないかもしれないけど。

でも、なんとなく

これだけは言いたくて。

「さっ、もう寝よ？明日も雪掻き大変だし。」

永瀬『……A。』

「ふふふっ、…もう。なに？」

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永瀬『キスしよ。』

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