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土壁の間に溝を掘って、水が流れやすくなる。

田んぼの水抜き。






今のうちに

しっかり田んぼを乾かしておかないと

稲刈りの時にぬかるみ、作業にならない。






緑色だった稲の葉は、黄色くなり

こうしてお米にじっくりと旨味を増して行くのだ。






.






「ふふっ、廉もすっかり農家の人だね。」


永瀬『えっ俺?』


「んーー、ちょっとだけ。」


永瀬『…ちょっとかぁ〜、俺もまだまだやなぁ〜』






そう。

全然、まだまだ。






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紅葉の山を、

自転車で漕いでいく。






永瀬『あっ!!ちょっ、待って。』






キキーッと急ブレーキをかけた廉。

私も慌てて自転車を止めて振り向いた。






廉は、何やら山道に落ちた何かを拾い






永瀬『なぁーーー、Aこれって栗?』






そして、大きな声で私に聞いてくるので

仕方なく自転車を廉の元へ押し戻した。






「ふふ、そうだよ。栗。」


永瀬『へぇ〜、マジでトゲトゲやん。』


「持って帰る?」


永瀬『えっ、まさか…』


「今日は、栗ご飯でもしようかな?」






そう言うと、

廉は無我夢中で栗拾いを始めた。






そんな時に現れたのが、私達のライバル。






「ねぇ、廉。」


永瀬『ん?』


「ちょっと、静かにこっち来てみ。」


永瀬『……え?』






しゃがんで栗探しをする廉を

手招きしながら小さな声で呼ぶ。






ゆっくり私の元へ歩いてきた廉の腕を掴み

一緒にしゃがむ。






永瀬『…っえ!?』


「シーー…!!」


永瀬『…いや…だって』






掴んだ腕に過剰に反応する廉を黙らせて

あっち見て、とある場所へ指を刺す。






すると、






永瀬『…ぅーーーーわ……えっ…』


「…リス。あの子も栗を取りに来たんだよ。」


永瀬『…やばぁー……バカ可愛い…』


「ね?」






そこに居たのは、

自分の栗を取られ過ぎやしないかと

心配になって山から降りてきた、小さなリス。






「初めて?」


永瀬『初めてよ。…生リス。』


「んふふ、見れて良かったね。」


永瀬『俺が栗取りすぎたから、怒ってんのかなぁ。』






眉を下げて子供みたいな事を言う廉を、

私は隣でじっと見つめた。






永瀬『なに?』


「廉も、なんかリスに似てる。」


永瀬『……。』







切れ長の茶色い瞳と視線が重なり、

お互い、自然と見つめ合う。






このまま、

2人は気が済むまでじっと見つめて__






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設定タグ:永瀬廉   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:ayu | 作成日時:2020年9月15日 10時

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