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スウェットのポケットに両手を入れて
目をパチパチさせて遠くから私を見ている
廉の姿があった。
永瀬『A、…どうしたん？』
何も言わず、ただ座り込む私を
とても心配そうにした廉が駆け寄ってきた。
永瀬『…A？』
「……。」
私の顔を覗き込むようにして
同じように座り込む廉。
「…どこ、…行ってたの？」
永瀬『…あー…うん。…ちょっと散歩。』
「…なんで？」
永瀬『んふふふ、…男にもいろいろあんのよ。』
なによそれ。
質問には答えず、
そのかわりに廉は私の髪を優しく撫でた。
永瀬『…どっか行った思たん？』
「…思った。」
永瀬『……んふふふ、黙って行かんわアホ。』
「……。」
廉の細い指が、
私の髪をスーッと通り過ぎ、
それをまた繰り返す。
永瀬『……。』
「……。」
夜の月明かりに照らされた
廉の表情は、いつも以上に美しく映えた。
キラキラと輝く瞳に吸い込まれ、
その眼差しから逃れられなくなる。
永瀬『……。』
「……。」
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すると突然、
廉は急に立ち上がって、
永瀬『あぁーーー、もう。…意味ないやんけ。』
そして今度は自分の髪を
クシャクシャと掻きむしる。
「…廉？」
永瀬『……っぶな。…』
「なに？なんて言ったの？」
その不思議な行動に、
私も立ち上がって上手く見えない廉の表情を
覗き見る。
永瀬『…A、ちょっと近いわ。』
「ねぇ、さっきなんて言ったの？」
永瀬『…言ったら俺ここ出て行かされるかもしらん』
「…はい？…なに、悪い事でもしたの？」
廉は頑なに答えてくれなくて
ついに私の言葉も無視して
玄関の方へと歩いて行く。
「……。」
.
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なんだか、
その背中を見ていると無性に、
.
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「…れん！」
.
.
永瀬『…っお！！……』
「……。」
後ろから、
抱きしめたくなった。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月15日 10時
