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親とまともに話した記憶は殆ど無い。
唯一、目を見て話してくれたのは、
会社経営について、理念について。
中学に入ると、両親は海外へ回るようになり
そこからはほぼ無縁状態。
自分に対する興味はゼロ、
いずれ引き継がないといけない、跡取りの息子。
ただそれだけ。
と、永瀬は悲しく笑いながら私に話をしてくれた。
永瀬『でもなぁー、Aと出会って
学校もなんか楽しくなって、毎日ワクワクするねん！
Aは、俺の家柄とかそういうのじゃなくて、
ちゃんと中身を見てくれる。…』
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永瀬『だから、好き』
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と言って、永瀬は恥ずかしそうにクスッと笑った。
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「……私も、」
永瀬『Aも？俺のこと好き？…んふふ、嬉しい』
明日には、全部忘れる。
こんな風に話した記憶も、私だけが覚えている。
私は、永瀬の頭を膝元から追いやり、
永瀬と向かい合わせになるような体勢で寝転んだ。
真っ直ぐな瞳と視線を重ねる。
私の手は、永瀬の頬にそっと置き
永瀬『どうしたん？』
「……」
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黙ってじっと見つめていると
しばらくして私達は言葉を交わすことなく
同時に布団の中で身体を寄せ合った。
手と脚が絡まるように密着して、
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「…寂しかったね、…っ、……」
永瀬『……ん。』
割と長い時間、
私はこっそり涙を流し、永瀬の背中を優しく撫でた。
＿＿親父が死んでん。
＿＿永瀬の名を汚すな。親から唯一教わったんがこれ
＿＿俺なんておらんのと一緒よ。
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そんな人生、想像出来ない。
本当の一人ぼっちは、私も知らない。
辛かったね。
寂しかったよね。
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朝起きると、
永瀬『…んはっ、…俺また？笑』
「…うん。」
永瀬『毎日飽きんとよぉ来るわ俺。』
「…本当、ね。」
永瀬はまた昨日の事を全部無くしていた。
私の首元で、永瀬の鼻を啜る音。
昨日の事は、私も胸の内に秘めようと強く誓った。
永瀬『腹減った。』
「うん。作ってくるから待ってて」
永瀬『あ、スクランブルエッグはケチャップ多めで。
あとスープ、お前の味うっすいから濃いめにして。
野菜ジュースもさ、最近ドロッドロやねんけど。
あれどうにかならんの？
なに、お前料理のセンスない感じ？もしかして』
…チッ。
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作者名：ayu
| 作成日時：2021年2月10日 0時
