9 kaito side ページ9
kaito side…
こうして彼女は、
ビクビクと毎日登校下校を繰り返すようになった。
友達作りとは、かけ離れた生活。
あまりにも侘しい高校生活。
きっと、彼女も心の拠り所が欲しかったのだろう。
.
「…おなしゃす〜♫…おなしゃす〜♫おーなーしゃーす！」
…ほらー、ちょっともう頭おかしくなってんじゃん。
大きなヘッドフォンをつけて
一人でヘイ！ヘイ！っとか言っちゃって。
可哀想に。これも全部あの廉のせいだね。
だからと言ってはなんだが、
彼女は急にある事に芽生え始めてしまったのだ。
それは、
.
.
「はぁ〜、…今回の新曲も最高だわぁ。」
最近まで真っ白だった彼女の部屋の壁は
ある人のポスターで一面を埋める。
携帯の待ち受け画面も、等身大の抱き枕も
大量のCDやDVDもぜーーーーんぶ、
.
「岸優太様。…来月のライブ、どぉーか当選しますように」
誰だよ、そいつ。
ま、よく分かんないんだけど
どうやら彼女は友達作りよりも大事なものを
最近見つけたらしい。
希望も夢も全て、その岸優太という男に注がれる。
心の拠り所も、癒しも。
まぁ、一言で言うとね。うん。
.
「…ふふ、新曲もう一回聴いちゃおーー！！」
.
急にオタクに目覚めちゃったみたい！
ちょっと経緯が不明なんだけどね。
.
こうして彼女は、
一人で楽しむ道を選んだ。
いや、彼女にとっては一人じゃない。
アイドル、岸優太を追いながら共に歩んでく。
そう決めたらしい。
.
って、
これのどこが恋と友情の青春ストーリーかって？
.
ふふ、まぁまぁ落ち着いてよ。
.
それはまだ、もう少し先の
「おなしゃす！おなしゃす！きーしーくーん！ヘイッ♫」
…はぁ、うるさいなぁ。
.
それはまだ、もう少し先の話＿＿
.
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作者名：ayu
| 作成日時：2021年1月31日 1時
