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『…帰ろか』
「廉くん。」
『……?』
急かすように出口へと促すも
Aはそんな俺を呼び止める。
じっと俺の顔を見てくるから
ちょっと半ギレで、なに?
という顔をして待った。
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相変わらず、Aはズルい女やった。
「楽しかった?試合。」
立ち止まったまま
そんな事を聞いてくる。
「最後の試合は、楽しかった?」
『………』
片手に小さな花束
きっともう着ることのないユニフォームが入った鞄
汗だくになって走り回る事ももう無いし
仲間とぶつかり合う事も分かち合う事も無い
不純な動悸の中にも
俺なりの情はちゃんとあって
やっぱり込み上げるもんがあった。
楽しかった試合
最後の試合は、最高に楽しかった。
でも、
『…ふ、…めっちゃ悔しい。』
「……」
泣くなんてありえへんから
かわりにグッと唾を飲み込んだ。
Aは俺の片方の手を掴み、
そしてギュッと優しく握る。
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「…泣く?笑」
『…アホか、泣かんわボケ』
「ふふっ、可愛くないなぁ廉くん。」
『んふふ…』
ゆっくりと手を引っ張られて
そのままなんか知らんけど
俺の身体はふんわり包み込まれて
背中をトントンされた。
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やっぱズルいなぁ〜コイツ。
頑張ったね、とか
凄い、とか
気にするな、とかじゃないのよ。
俺が欲しい言葉わ。
なにも言葉なんて要らん時ってあるやん?
今、まさにそれで。
俺の両手は
気付けばAの腰に回してた。
『このまま連れて帰ろうかなぁ?Aの事。』
「なに言ってんの。ふふ」
『あかん?笑』
「負けた人にご褒美は無いよ」
『悪魔。ちょっとは慰めんかい。』
「やだよーだ。」
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こんな事してても
俺はただの生徒って事でいいんよね?
むずっ…
コイツの距離感がマジで分からん。
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『…じゃ』
「うん、じゃーね。あ、ちゃんと宿題」
『するって、言われんでも。…』
「ふふ、はいはい。」
家に上がれるなんて期待は
んーー、1ミリくらい?はあったけど
99%ないの分かってて
ちゃんとAの家の前まで送り届けた。
また来週
特になんの期待もないけど
Aに会えるのを楽しみに
明日からを俺は過ごすだけ。
チャンスも、もう何も
「廉くんさ、」
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aimi(プロフ) - ギャーーーーーーーーーーーわーーーーー‼️今回もすごかったです‼️廉くん目線難しかったですよね?私達のためにありがとうございます✨これからも応援してます✨ (2021年11月2日 19時) (レス) @page42 id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
aimi(プロフ) - 長文すみません、、、 (2021年11月1日 20時) (レス) id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
aimi(プロフ) - すごく面白かったです‼️まとめみたいなのが大好きです❗️廉くんも可愛かった❤️すごく良かったです‼️これからも頑張ってください!応援してます✨ (2021年11月1日 19時) (レス) id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
aimi(プロフ) - 初めまして?小さな世界の感想書くところがなかったのでこちらでいいですか❗️書かせていただきます✨ (2021年11月1日 19時) (レス) id: 7523aceb2d (このIDを非表示/違反報告)
ayu(プロフ) - かなさん» かなさん★おーーーまたせ致しましたすいません…( ;∀;)ようやく新作公開しております!是非お暇な時に読んでいただけると幸いです★ (2021年1月31日 2時) (レス) id: 72acefca01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayu | 作成日時:2020年11月27日 19時