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永瀬『…んふふふ』
「…笑ってないで…ハンカチとか下さいよ…」
永瀬『んなもん、持ってない。』
「…やっぱ優しくなぁぁいーー…っ……鬼ぃっ…」
永瀬『誰が鬼や。』
ハンカチなんてくれないし
慰めの言葉もない。
先輩、目の前で女の子が泣いているのに、
慰め方が下手くそです。
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でも、
涙が止まらない私の背中を
優しくさすってくれる先輩の手は
どんなに優しい言葉なんかよりも、
私の心を温かくした。
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永瀬『落ち着いたか？』
「……はい。でも、ちょっと気分悪いです。」
永瀬『吐く？』
「まだ、大丈夫です。」
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きっと根は、すっごく優しくて
温かい人なんだろうな。
「…先輩」
永瀬『ん？』
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街灯の光で、
先輩の綺麗な瞳がキラキラと輝いていた。
目付きが悪く、
いつも人を見下したように見るその瞳は
今日は、まるで違う。
なんだか。
「…先輩、なんか今日。…猫みたい。」
永瀬『……。』
「…ふふふ、…すいません。」
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まん丸にした瞳が、
真っ直ぐに私を捉えて、
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永瀬『…アホか。』
「…ふふふ」
そして初めて、
先輩は、頬に猫髭みたいなシワを作って
今までで一番、
解けた笑顔を私に見せてくれた。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月7日 12時
