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怖くて、私はギュッと瞼を瞑る。
なんだか、凄い罵声を浴びせられそうで。
でも、
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…え？
永瀬先輩の綺麗な手が今、
何故か私の頭の上に…
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永瀬『んふふ、もう遅いわアホ。』
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そう言って
私の髪をクシャクシャっとした。
「……え」
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私の驚いた顔を見て、
また優しく笑う先輩に。
なんだろう。
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不思議と胸の奥が、疼く。
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永瀬『で、用件は済んだ？』
先輩はやはり
良くできました。とか、
ありがとうとか、凄いとか、
褒める事は決してしなかった。
私は社会人として、
当然の事が出来なかったのだから当たり前だ。
だからか、
先輩の冷たい態度や、言葉は
むしろ今の私には、丁度良かった。
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立ったまま先輩は、
手をポッケに入れて私を見下げている。
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私は、
ギュッと握り拳を作り、
今度は真っ直ぐに先輩の目を見て、
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「あと、もう一つあります。」
永瀬『なに、まだあんの。』
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もう逃げない。
昨日よりも、さらに気持ちが固まったよ。
ダメな自分をとことん見つめ直して
半年後、一年後の自分は今よりも、
もっと好きな自分でありたいから。
でも、
でも少しだけ。
少しだけでいいから、先輩。
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「あとほんの少しだけ、」
永瀬『ん？』
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「少しだけでいいので、…優しくして下さい。」
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じゃないと、
やっぱり心が折れてしまいます。
永瀬『は？』
「宜しくお願いします。」
私は、
ゆっくりと頭を下げて
自分の机に腰をかけた。
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言えた。
言えたぞ、私。
私だけじゃなくて、
先輩にも、少しだけでいいので
変わってもらいます。
永瀬『なに勝手に満足してんのお前。』
「今日も頑張りましょうね、先輩。」
永瀬『俺は優しくなんてせえへんぞ。』
「宜しくお願い致します。」
永瀬『おい、話聞いてんのかお前』
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どうぞ末長く、
宜しくお願い致しますよ。
鬼の永瀬先輩。
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作者名：ayu
| 作成日時：2020年9月7日 12時
