a rose . (ページ8)

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「お前らいつまで付いて来るんだよ。ほら散れ！」

それからキタミツが予約していたお洒落なバーに行ったのち、ほろ酔い気味な俺らは横尾さんの運転する車に乗せられてキタミツの家の前までやってきた。勿論車に全員なんて乗り切れないから後ろにはタクシーが付いてきている。

「じゃ、じゃあ…」
「宮田はダメだっつの」
「ていうか何このお持ち帰りデートコースみたいなの。北山、宮田の事落とそうとしてるの？」
「違えわ」

最初こそ初対面だったのもありよそよそしかったけどお酒も回って来たせいなのか2軒目を出た頃にはキタミツにつられたのか同じように俺の事を呼び捨てになっていた。改めて挨拶を済ませたから俺もニカと千ちゃんって呼んでいたけど、いつのまにかあの藤ヶ谷くんまでもが俺の事を呼び捨てに…！

「宮田ばっかり狡いぞー」
「ずるいぞー」

眠気とアルコールで呂律の回りが甘くなっている玉さん。元々ほんわか柔らかかった雰囲気が更に柔らかくなった気がする。

「俺だってもっと宏光と話したいのにー」
「おれもみあたとはなしたいのにー」
「うるせ…え？」

車から降りてマンションまで俺にもたれるようにして歩いていた玉さんの思い掛けない言葉に、ざわざわと煩かった彼らがキタミツの怒声より先に静まった。恐らく全員の視線が俺の横にいるイケメンくんに注がれているというのにまるで気付かずに、ふふんと幸せそうに笑みを浮かべている。

「た、玉さん…」
「ねえ、玉さんじゃやだ。違う呼び方がいい」

ひょえ…こんなの俺の心臓が耐えられる訳がない。この呼び方ですら毎回必死に呼んでいるというのに、もっと距離を詰めたいって事で宜しいですか？

「おい宮田、いくらイケメンにデレられてるからって顔面崩壊しすぎだぞ」
「や、だってこんなの」
「としくん」
「へ？」

じっとこちらを見つめる瞳。その数が徐々に増えていき、気付けば玉さんに向いていた視線の全てが俺に集まっていた。

何というか、過去になかなか浴びたことのない期待の篭った目。早く言えよ、呼んでやれよ。目は口ほどに物を言うってこういう事かって実感するくらいに、声にはなっていない言葉が聞こえた気がした。

「…ゆ、ゆうくん？」
「んふふ～」

「ってこんな所で何してんだよ。あーもうしゃあねえな、うち来い」

俺の中で新しい扉が開けかけたその時、スッと飛び込んで来た諦めにも似たキタミツの声にそれはほんの少しの隙間を開いただけとなった。

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