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「Happy Birthday to yo 〜」
定番の音楽が流れたかと思えば豪勢なバースデーケーキが運ばれてきた。まもなく日付が変わる。部屋の電気が消されて、ローソク消しが始まるのだろう。
ローソクの僅かな光に切り替わる前、明るい時に軽く室内を見渡しただけでも有名な役者や歌手、まだ若いモデル、スポーツ選手までその顔触れは様々だった。もちろん俺みたいな表舞台にはいない人間もちらほら見受けられる。それがキタミツの人間関係の広さを実感させられるんだ。
前回参加した時は6年前だったかな。規模の変わりようはキタミツの努力が手に取るようにわかる。
「へへ、えーっと今年も年を重ねることができ無事に16歳になりました」
あの時と変わらない自虐交じりな挨拶は定番なのだろう。飛び交う突っ込みや笑い声はどれも優しくて、キタミツがどれほど愛されて慕われているのか気付かされる。
「「凄いなあ…」」
ポツリと思わず零れた声は自分の声の筈なのに隣からも聞こえてきたような気がした。
「え、」
声のした方へ顔を向けるとそこには高身長イケメン。…待って、この人も知ってる気がする。誰だったかな、と考えを巡らせていると妙に感じる彼からの視線。チラリと目線を再び彼に向けるとバチリと音が鳴るんじゃないかってくらいに勢いよく重なった視線。
え、待って待って、超見られてない?顔に何か付いてる?。いや、こんな地味なやつがなんでこんな所にいるんだよって事か。場違いだなんてそんなこと自分がよく分かってるって。
気付けばケーキが人数分に切り分けられていて、出遅れた俺と彼の元にキタミツと俺ら2人分のケーキを手にしたマネージャーが来ていた。
「お、玉ちゃん来てくれたの?俺超嬉しいんだけど!」
「別に…近くで撮影だったから、寄っただけ」
玉ちゃん…思い出した!前にキタミツの舞台に出てた売り出し中のモデルの子か。確か事務所の後輩だっけ?そう言えばこの前柔軟剤のCMで見かけたな。
「んはは、じゃあその手に持ってるのは俺宛じゃなかったのかー!」
「…ちぇ」
彼がキタミツに背で隠すように持っていたこれまたお洒落な紙袋をこの一瞬で目敏く見つけてるんだから、本当凄い。
「なに、お前ら知り合いだったの?」
「へ?違う違う、偶々玉森くんの近くにいただけ!」
「んは、玉ちゃんだけに偶々な」
けらけらと楽し気に笑ってるけどそう言うところは見た目に反して昭和感が拭えない。玉森くん引いてるじゃん。
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作者名:狐楼 | 作成日時:2018年9月17日 5時