私の向こう側のあなた (ページ10)

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8　過去ページ10

ナギの家は、遥か昔からの大貴族であり、この世界に大きな影響を及ぼしていた。
　三番目、長女としてこの世に生を受けたナギに、当主であった父はこう言った。
　「女の子か。いい巫女になりそうだ」
　野心家で冷徹だった彼は、自らの娘を映し鏡を手に入れるのに利用しようとしたのである。
　「お前は巫女になるべく産まれて来たのだよ」
　「お父様の期待を裏切ってはだめよ、ナギ」
　「巫女になることが、お前の使命であり、生きている意味なのさ」
　「巫女になること…それが、私の生きる意味…」
　洗脳と言うべき教育に、ナギはいつの間にか自我さえも乗っ取られていた。
　彼女が旅に出たのは、二年前のことだ。そしてユラと同じように、ツヅリと出会った。
　ナギは、これこそが運命だと信じて疑わなかった。巫女になるべき私が、映し鏡の真実を知る彼と出会うことが。
　しかし、彼から聞かされたのは残酷な言葉だった。
　「君には天性の素質はないね。その点なら彼女の方が格上だ」
　ナギは悔しく、情けなかった。巫女になるべき私が、巫女にならなければいけない私が、何故そんな奴に負けているのかと。
　彼女ーーーつまりはユラ。
　ナギはどうしても、彼女に遅れは取れなかった。

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