私の向こう側のあなた (ページ9)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,488 hit

7　巫女の素質ページ9

木々の間から見える夕日は、位置こそ違えどずっと昇っていた。赤々とした炎のような太陽が、葉を黒い影に染める。
　「本当に日が落ちないのね…」
　「きれいでしょ？ここは観光地としても有名なんだ」
　ユラの感嘆の言葉に、ツヅリはいつものような笑みで言った。
　「…でも、本番はここからさ。狐ノ神は真の巫女に誘われる。…君にその素質があるかだ」
　「え…私、どうしたら…」
　ツヅリはふるふると首を振った。
　「自然に誘われてくるさ。君なら、きっとね」
　「…」
　ユラは困ったようにツヅリに目をやったが、やがて目を閉じて、祈るような体勢になった。
　すると、しゃん、しゃんと音がしだした。
　「これは…！」
　ツヅリの声が珍しく興奮している。ユラは目を開けた。
　白いもやのようなものがある。ゆらゆらとゆらめいたそれは、恐ろしいほどの威を放っており、やがて狐の形へと変わっていった。
　「これが、狐ノ…」
　「待って！」
　ユラがそう呟いた時、そう叫ぶ声がした。
　それと同時に、もやがふっとかき消える。
　「ああ！もう！」
　木陰から現れたのは、髪を振り乱し怒るナギだった。
　「ナギさん…」
　「全部全部あんたのせいよ！」
　ナギはそう怒鳴り付けると、ユラの胸ぐらをつかみ、感情をぶつける。
　「私は巫女になるべく産まれてきたのに、何であなたが、何であなたなんかがっ…！」
　「そうだね、君はそういう出自だったね」
　ツヅリが静かに言った。
　ここはで一度覗いて見るべきだろう。ナギの過去をーーー。