時給いくらで買えますか？【禪院甚爾】

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甚爾 side








A 「とりあえず私は自分のせいで不幸になったなんて微塵も思っていないって事です」







女はそのまま言葉を繋げる







A 「悪いのはあなたじゃなくて周りです、あなたはもっと自己肯定して生きた方がいいですよ、その方が楽ですから」







少しだけ目元を和らげて女はこちらを見つめてくる







A 「私にとってあなたは“良い人”なので、私はあなたを肯定しますよ」



















もうとっくに捨てたつもりだった





自分も他人も尊ぶことない





そういう生き方を選んだつもりだった






全部つもり(・・・)だった






自尊心が





自分を肯定したいという欲が





今になって溢れてくるのは何故か、









全てこの女のせいだ



家、飯、金の条件で俺はこいつに雇われてやった



居候を初めて数ヶ月




俺の素性を知らないくせにこいつは





感謝の言葉を口にして



“良い人”だと肯定して






ずっと欲しかった物をこいつはいとも簡単に投げかけてくる









めんどくせぇこの女はもしかしたら



他の奴らとは違うのかもしれない、と



僅かな期待をしちまう









そんな事を考えている間も女はブツブツと文句を垂れている








俺とこいつは似てる



特に昔の俺と



だか、決定的な違いがある






それは、








A 「そういう訳ですから、今日私が競馬で大負けしたのは連れて行った甚爾さんのせいにしておきますね」







最高に理不尽だな







ちゃんと聞いてますか？、と言ってくる女の頭に手を乗せた




思ってたより小さいなと思いながらガシガシと揺らしてみると







A 「は？辞めてくれます？」







ブチ切れる寸前の声色







甚爾 「お前って理不尽な女だよな」







そう言いながら手を離す







A 「理不尽じゃダメなんですか？」







完全に不機嫌になった女がこっちを睨みながら聞いてくる




理不尽なのが“良い”か“悪い”か





そうだな、









甚爾 「いや、悪くねぇ」







自然と上がった口角に逆らうことなくそう告げた








寧ろ良いくらいだ



不本意だが俺はこいつの理不尽さに救われてるんだからな














その後、女が


「性格が悪いのは自覚してるのでわざわざ言われると腹が立ちます」


と、キレ散らかしたのはまた別の話




あと、酒は美味かったらしい

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