時給いくらで買えますか？【禪院甚爾】

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甚爾side







ぐだぐだしながら次に買いたい物があるらしい女に着いていく





やってきたのは食料品売り場の、、、








A ｢甚爾さんも欲しいですか？｣








甚爾 ｢いらねぇ｣







A ｢お酒好きじゃないですか？｣








そう、やってきたのは酒コーナー



どれがいいか選ぶ姿を見ていると、



そういえばコイツは20だったなと思い出す




少し前までまで10代だったという事だが、コイツにガキっぽさはまるで無いな











甚爾 ｢べつに｣







興味なさげに返してやると








A ｢意外ですね｣







不思議そうな顔をする







A ｢不味いですか？｣








甚爾 ｢美味いと思った事は無いな、俺はいくら飲んでも酔わねぇし｣







A ｢そうですか、｣






女はそれ以上何も言わずにレジに向かった



















もう少しで19時だが



8月の暑さは日が沈んでも健在だ







自分用の酒の入ったレジ袋を片手に隣歩く女







前に行けば、速いと言われ



少しでも後ろに行けば、遅いと文句を言われる





そのせいでコイツの歩幅に合わせて歩くという、妙な癖が付いてきた








A ｢甚爾さんって良い人ですね｣








突然そんなことを言い出した女





“良い人”なんて生まれてこの方言われたことが無い





まためんどくせぇ女がよく分からん事を言い出したなと思って、片耳を向ける








甚爾 ｢根拠は｣







A ｢根拠、そうですね、、お酒も煙草もやらないからですかね、｣







甚爾 ｢どんな基準してんだよ｣







コイツの“良い人”の基準があまりに低くて笑ってしまう







A ｢私にとっては大事な基準なんです、お酒も煙草もいい思い出が無いので｣







そう言って珍しく笑った女




自傷するというか諦めというか、曇った感じだ





いい思い出が無い、


その言葉にコイツの額の跡がチラつく









甚爾 ｢いい思い出が無いって言う割には買ってんじゃねぇか｣






女の持つ袋に目を落とす







A ｢これは期待ですよ｣







甚爾 ｢期待？｣







A ｢お酒は嫌な事を忘れさせてくれるって言うじゃないですか、一時的なものらしいですけど｣







ああ、そういう意味の期待か







甚爾 ｢期待するだけ無駄だろ、忘れたい物ほど忘れられねぇよ｣

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