それでも空は 3 【夏油傑】【五条悟】 (ページ46)

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No side

暗い夜道を並んで歩く少女と少年

花火の点火まで

残り10分と31秒

A 「あのさ、」

Aの口から語られるのはあの日(・・・)の事と、心の内

A 「あの時、本気で信者達の事殺そうとしてたの」

あの時、がいつの事を指すのか説明されなくとも夏油は理解した

A 「理子や黒井さんがなんで殺されなきゃならなかったのかって、理由を考えて、でもそんなものは無いんだって思って、、

徐々に弱々しく、

揺れる声色で、Aは続ける

じゃあ逆に、理子の死を喜ぶアイツらが死ぬのは意味があるって、、殺すことに意義があるって、本気でそう考えてた、」

そこまで言って、立ち止まってしまったA

つられて夏油も立ち止まる

A 「それなのに、、いざ殺してやろうって時に傑が目に入って、何も出来なくなっちゃった、」

苦しそうに引きつった笑顔を夏油に向けると

夏油「、、それはどうして？」

“ 傑の顔が目に入って、何も出来なくなっちゃった、”夏油はその言葉へ問いかける

A 「なんで、だろ、、」

“わからない”なんてことは無いはず、

あの時、五条の姿は見えなかったのに夏油の姿だけは目に止まった事

ここまで彼女が苦しんだ事

初めて心の内を明かした事

彼女にとって夏油傑は他社というカテゴリーから外れた者

“特別”な存在になってしまっているのだ

しかし残念な事にその事をストレートに伝えられる程彼女は器用では無い

A 「呪術は非術師を守るためにあるって傑が言ったから、自分のやってる事が間違ってる気がして、それで、、」

言葉に詰まるAを夏油は静かに見守る

A 「考えないように頭の隅に追いやったつもりでも、毎日その事ばっかり考えちゃって、、何が正しいとか間違いとかもうわかんない、私、おかしくなっちゃったのかな、」

必死に溜めた涙がポツリと地面に滲み始めた

生まれてから16年、そのうちの15年はずっと家で社会から隔絶された環境でAは育ったのだ

呪術師になってまだ1年と少し、世の中を知らない彼女はずっと夏油を指針にしてきた

呪術は非術師を守るためにある、という指針がブレ始めた今、心は限界を迎えている

そんな心の底からのか細いSOSを夏油傑に向けたのだ