素直な君と、素直じゃない僕。 (ページ30)

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30 You side. ページ30

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私はチソンがデビューして、一度もステージを生で見たことがない。

デビューステージだって、チソンの家族と一緒になぜか私も招待されていたけど、

なんだか行けなくて...。

液晶の中で踊るチソンは
現実味がなくて

わたしにはそれがちょうどよかった。

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「Aちゃん！」

学校から帰宅途中、一人で街中を歩いていると名前を呼ばれる。
振り向くと笑顔のチソンのオンマ。

「こんにちは～！」

挨拶すると、今日も元気ね～なんて言われる。

まぁそれだけが取り柄ですから...。
なんて自分で考えながら悲しくなる。

チソンオンマは買い物帰りらしく、袋を両手に持っていたのでひとつ手伝う。

ありがとねぇなんて笑うオンマは、やっぱりチソンにそっくり。
いやチソンがオンマにそっくりなのか。

「ちょうどよかった～、ミルちゃんに渡したいものがあって！」

そう言って渡されたのは、NCT Dreamのコンサートチケット。

「あー...。」

デビューステージだって断ったのに、また律儀にチケットをわたしの分まで用意するチソン。

「この前は用事で行けなかったけど、今度こそ一緒に行こうね！」

ってオンマは笑うけど、わたしは差し出されたチケットを受け取れずにいた。
この前の用事だって、コンサートが分かってから行けない理由を作るために作ったのだ。

「あ、でも...。」

言いかけると、オンマはわたしの頭を優しく撫で、悲しそうに笑う。

「Aちゃん。

アイドルになってもチソンはチソンよ。

わたしの息子で、Aちゃんが昔から知ってるチソンよ。」

じわっと目頭が熱くなる。

「帰ろっか。」

オンマは結局チケットを自分のポケットに戻し、わたしの手をとり歩き出す。

チソンはチソンのままだって。

わかってる、わかってるんだけど。

チソンがずっと夢見てたデビュー。

嬉しくて
しょうがないのに、

どうして素直に喜べないんだろう。