曖昧な彼女 (ページ18)

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あまりにも
スムーズな流れだった

『…。』

「まぁそんな落ち込むなって…笑」

『笑うな…』

「ごめん。」

『あぁ悔しい！…っ痛ぁ！！』

叫んで勢いよく頭を下に向けるから
散らばったジェンガが額に当たったようで

プラスチックだから角とか痛いだろ

涙目なってんじゃん
しかも額ぶつけるとかもう何その可愛さ

「あー、ちょっと赤くなってる。」

『ううぅ…』

「ははっ笑、じゃあ賭けに勝ったわけだし…」

拗ねた顔で俺を見つめて
何が良いのかとと催促してくる

「名前、教えて。」

目を見開いて驚いた顔

この部屋を共有しているだけじゃ足りない
他に誰も知らない成瀬さんの事を知りたい

気持ちが憧れだけじゃ無いと自覚してから
距離が近づいて更に意識して

もう一歩
彼女に近付くものが欲しいと

醜い欲が出た

「今後も成瀬さんって呼ぶのは変わらないけど、
気になっちゃったから。教えてほしいなって。」

もちろん彼女の気持ちを無碍にはしない

下の名前を知りたかっただけで
呼ぶつもりはないって意志は伝わって欲しい

『レイ、…成瀬レイだよ。』

「レイ？」

『うん。』

「ありがとう。成瀬さん。」

その意志表示のためにも改めて名字で呼ぶと
すごく優しく笑ってくれた

「成瀬さんが勝ってたら、俺何させられてた？」

『秘密。』

「え、ずる。」

笑いながら
ジェンガを片付けていく

『次のゲームに持ち越しする。
勝ったら叶えてもらうからね…、ふふっ笑』

「怖いんだけど！？」

次何のゲームにしようかなぁなんて
のんびり話していると突然震えた成瀬さんのスマホ

成瀬さんはサッと通知を確認すると
すぐにスマホを伏せてテーブルに置いた

そして何事もなかったかのように話を続ける

『そもそも2人で出来るゲームって何がある？』

「…将棋、囲碁、トランプ、」

『ルールわかるの？』

「バカにすんな？それぐらい余裕だわ。」

『あ、ババ抜きから始める？』

「2人でババ抜きはおかしいだろ…笑」

あぁそうか

あの噂は本当なんだ

画面を見た彼女は
俺が見たことのない顔をしていた

次もどうせ俺が勝つよって揶揄いたかったのに

もうそんなことを言う気力も失せて

こんな呆気ないものなのかと

虚しくなった

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