曖昧な彼女 (ページ16)

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事務所の優しさで提供してもらった秘密基地に
訪問者が1人増えて暫く経つ

着替えたりメイクしたり勉強したり
たまに寝てしまうこともあったけど

色んなものを持ち込んでも怒られなかったから
甘えてこんな状態の部屋になっているんだけど

4歳上のお兄さんである彼は
とても穏やかで話しやすく居心地が良い

知り合った当初こそ変な距離感はあったものの
よく話すようになって仲は良くなったと思う

「卒業式いつ？」

『え？』

「え。」

『来週。』

「まじ？」

『今更すぎてびっくりした。』

「…成瀬さんはその日ここに来る？」

『わかんない。』

「…わかんないのか。」

『卒業式の次の日は事務所来るよ。』

「本当？」

『うん。』

「わかった。」

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なんて会話をしたのは1週間前

昨日は卒業式だった

「…大学行くの？」

『短大行くよ。』

「そっか。」

『大学に行っても多分今と変わんないから
江口くんも何も気にしてないんだと思ってた。』

「いや、卒業式ってイベント自体を忘れてた。」

『えー、笑』

卒業のお祝いとして
私の好きな和菓子屋さんのお菓子を沢山用意してくれた

関係性から考えても素晴らしいチョイス
私は花より団子なんだよ
よくわかってる

美味しすぎてお菓子を口に運ぶ手が止まらない

「卒業式、ボタン貰ったりした？」

『んー？』

「食うのに夢中じゃん笑」

『貰ってないよ。』

「あ、聞いてた。告白は？」

『あったね。』

「やっぱり。呼び出されて告白とか？」

『普段から呼び出されても行かないこと周知されてて』

「は？行かないの？」

『行かない。どうせ断るし、面倒だから。』

「やば。」

『呼び出しても来ないってバレてるから、
皆んな果敢に正面突破してくるようになった。』

「正面突破…」

『昨日は卒業式だから記念告白多かったよ。』

「俺の知ってる高校生活とかけ離れてる。」

『そんなことないでしょ。』

江口くんは絶対モテる
優しいし見た目だって良いんだから

こんな目立つ人
女の子は放っておかない

『江口くんは高校の卒業式で告白した？』

「ないわ。」

『えぇー、面白くない。』

「面白がるな笑」

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