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江口side
いつも酔っているけど
今日ほど深く酔ってる姿は見たことがない
以前俺が酔ってた時も
こんな感じだったのかな
仕事が落ち着き久しぶりに訪れたBarでは
早い時間なのに既に葵さんの姿があって
「葵さん、」
『ん…？』
「水飲もう？」
『…』
「葵さん？」
喋るわけでも笑うわけでもない
酔っている火照った顔で俺見つめる
気持ちを読み取れなくて
離れた場所にいる蓮くんを見ても
首を横に振るだけ
『江口さん…』
「うん、？」
『…ふふっ笑』
俺の名前を呼ぶから返事をすると
ふにゃっと笑ってみせる
するといつも纏めてる髪の毛が
少し解けて顔にかかるから
お互いが見つめ合ったまま
俺は葵さんの髪を耳にかけるよう
無意識に手を動かした
ゆっくり近付く俺の手に
表情は一つも変わらない
恥ずかしがる事も嫌がる事もない
髪を耳にかけた俺の手に
葵さんは自分の手を重ねて
俺の手を顔の近くまで持っていき
軽く握ったまま眠りにつく
名前を呼んだのだから
俺だとわかっていたわけで
都合の良い解釈をするぐらい許して欲しい
彼女のいつもの定位置
カウンターの奥の席
深く眠った葵さんを他のお客さんから
隠すように身体の向きを変えて
掴まれた手を優しく握り返す
宏太朗のこと面白がってる場合じゃ無い
引き返せなくなってたのは俺だ
.
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作者名：ayay1427 | 作成日時：2023年10月21日 14時
