出口のない迷路 ページ2
「俺、IDOLiSH7のはじめての冠番組で…MC担当してんだ。」
三月は、相談なんて本当はしたくなかっただろうと…エルは思う。
「でも…俺が、俺が力不足な所為で…その、皆に上手い具合に出番が回ってない、みたいで…。」
放送されていたIDLiSH7の番組での仕事ぶりを見る限り…
三月はきっと、プライドが高くて…責任感が強いタイプ。
自分の役割で、自分の仕事で…メンバーの役に立ちたい。
足を引っ張りたくない。
そういう思いが人一倍強い人物。
そういうタイプはこういう時、誰にも頼らずに溜め込むだろうし…きっと弱った姿も大切だと強く思う相手にこそ見せたがらない。
自分も、同じタイプだという自覚があるエルはその性質をよく理解していた。
でも、だからこそ…エルは少し強引にでも三月を引き止めて…話をするところまで漕ぎ着けたのである。
溜め込んで、自分の弱った姿も全て隠して…そうした先に待っている悲しい結末も…エルは誰よりも知っていたから。
「邪魔だ、って…ファンの子に言われちまったんだっ…。」
そして、それは…その判断は正解だったともエルは思った。
「上手くやろうって…頑張ってるけど…っ空回ってばっかでっ…何を頑張ったらいいのか…わからなくなって…今、頭ん中グチャグチャなんだ。」
「って…年下に何言ってんだって感じだよな。悪い…。」
今…三月から吐き出されているそれはアイドルであれば誰でもぶつかるものであって…
潰れていくきっかけすら生み出す、恐ろしいもの。
エルも今…対処に追われているものだったからである。
それに名前は無いけれど、敢えて名を付けるとするならば…
『無限の期待』。
それは、人を幸せにしたい…笑顔にしたいと願うアイドルを一番に苦しめる猛毒であり…
実力を高めていくのに必要な秘薬。
そのどちらにもなりうる存在で…
それが猛毒として現れた場合、もはや解毒法は無いに等しい。
ファンの好きが生まれる度に、同時に生まれてくる不満の声が強まって…
その不満に触れる度に生まれる自分への嫌悪感が、その身を滅ぼす。
まるで、出口のない迷路に放り込まれたようになるそれを二度味わっているエルは…今の三月の苦しみが痛いほどにわかる。
だからこそ…
『…三月さんは、頑張ってますよ。十分すぎるくらい…だから、今だけは…休んでください。』
『焦って、疲れている時に前へ行こうとすると…足を取られて、墜落してしまいますから。』
敢えて、今エルが言える解決策を口にしないことを決めた。
三月は、自分の力で登ってくることを…確信したから。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポテチ(プロフ) - 月さん» 良かったです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年11月14日 17時) (レス) id: ddf2424aad (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - ポテチさん» 確認できました!ありがとうございます!直ぐに訂正しますね。ご報告ありがとうございました! (2018年11月14日 17時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
ポテチ(プロフ) - 「出口のない迷路」の最初の方に「IDLISH7」ってあると思うんですけど、そのスペルの「IDOLISH7」の“O“が抜けてしまっていると思うんですが…。分かりにくくてすみません。分からなかったらまた聞いてください! (2018年11月14日 17時) (レス) id: ddf2424aad (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - ポテチさん» 作風が好きだと言って頂けて嬉しいです。ありがとうございます。 (2018年11月14日 17時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
月(プロフ) - ポテチさん» すみません…確認してみたのですが、どこの部分で間違えているのか発見できませんでした。どの辺りで間違ってるとか教えていただけないでしょうか?大事なグループ名を間違えるなんて作品に失礼極まりないので… (2018年11月14日 17時) (レス) id: f01d23ed14 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ