月神の祈り【アレスの天秤】 (ページ3)

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日本サッカー界に大きな影響を与え…今もなお、その名を知られている、天才プレイヤー3人組…

『三貴士』。

1人は現在、世界の第一線で活躍中。

もう1人は様々な地方で自分を鍛えているなど…

三貴士と呼ばれることが少なくなった今も、サッカー界の表舞台で同志であった2人が活動しているというのに…

1人、サッカーをやめ…表舞台から姿を消してしまった…月の神『ツクヨミ』の名を冠する男…

十束月翔。

＂三貴士でも、サッカープレイヤーでもない＂。

そう語る彼が何故…故郷であり、彼のサッカーの原点でもある地…日本に帰国したのか。

「凪沙くんがまさか本当に貴方をよこしてくれるとは思いませんでした。依頼書をお送りしてからかなり悩んでいたようですからね～。」

そもそものはじまりは、目前の…大柄で、サソリの尾のような独特な髪型をした中国人の男…

趙金雲が月翔の師…十束凪沙に依頼書を送ったことだった。

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今から、約ニ週間前。

世界中を巡り、凪沙の言う仕事を片付ける手伝いをしていた月翔はその時…ロシアにいた。

しかし、ロシアに着いて5日程が経過した頃…

突然、凪沙は月翔を呼び…真剣な声音で言ったのである。

「月翔、君もそろそろ旅立ちの時です。…本当は君自身の意思で、君自身の考え方で決めた場所へ行って欲しかったのですが…君にしか頼めない、君にしか出来ないことが…今目の前にあります。ですから…君には、それを成し遂げてきてほしいんです。」

かつて…他の三貴士が、自分の新たな道を切り開き…自分を成長させる為、旅立ったように…

月翔にも旅立ってほしいのだと。

「行き先は日本。貴方の…そして、あの2人と私…全員の故郷です。そこに、私の知人がいて…とあるサッカー部の監督をしています。」

「月翔…貴方には、彼の元へ行き…選手として、または指導者としてチームを勝利へ導くお手伝いをしてあげてください。…あの2人には出来ない、貴方なりの修行になると思いますよ。」

自分たちの故郷…日本へ帰り、自分の知人の役に立つという修行をしてきてほしいのだと。

『…先生、申し訳ないが…それは無理だ。』

しかし、最初…月翔は断った。

『…俺は、もう三貴士でも、サッカープレイヤーでも無くなってしまった。…誰かにサッカーを教えられる力も無ければ…その資格もない。』

『…親友の1人も救えない俺には。』

サッカーをやめ…自身の光との問題から目を逸らし続けている自分にはその資格がないのだと思っていたから。