月神の祈り【アレスの天秤】 (ページ2)

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幼き頃、俺たちは必死にボールを追いかけていた。

「まだまだ、ですね。3人とも、読みが甘すぎですよ？こんなことでは、3人がかりでも僕からボールを奪うことはできません。」

俺たちが立っているステージの先、遥か彼方で…華麗にボールを操る師に憧れ…

『くっそー！ナギ先生速すぎだろ～！読もうと思ったって読めねーし！ま、次こそぜってぇボールとるけどな！』

『当然だ。…お前、俺の足を引っ張るなよ？ノロマ。』

『なにぃ！？お前だって先生の動きについてけてねぇーし、最初に抜かれたじゃねーか！お前こそ俺の邪魔すんなよな！バーカ！』

時に言い争ったり、競い合ったりして…いつか、遥か高みにいる師を…必ず追い越してやろうと、情熱を燃やしながら。

『おーい！月兄～！そろそろ練習再開しよーぜ！』

『…さっさと来い。このノロマは兎も角、お前は立派な戦力になる。』

『……わかった。』

そんな頃の俺たちの間には、確かに…家族愛にも似た、友情があったように思う。

でも………

いつからだろう。

そんな同志たちと心通うことがなくなったのは。

『今の俺に、お前の力など不要だ。…もう、お前やアイツなんかと『三貴士』などと一まとまりにされたくはない。』

俺の光が、彼との関係が…変わってしまったのは。

今でも、俺はその理由をわからないでいる。

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大空に向かって、天高く伸びるように建つ…トキオ・サンシャインタワーに見守られ…

今日も、日本の中心都市…東京に朝はやって来る。

そんなある朝…東京国際空港に、エイリアン航空の飛行機が一機着いた。

『……着いたか。』

日本のサッカー界において、重要な…とある人物を乗せて。

そんな重要人物は、懐かしい夢から目覚め…何を思うのか、その光なき灰色の瞳で何処か遠くを見つめており…真意は全く読み取れない。

そんな彼のことで、わかることと言えば…

「ホッーホッホッホッホッ！お待ちしてましたよ～三貴士『ツクヨミ』…十束月翔くん。」

『…その名で呼ぶな。』

『俺は…もう、三貴士でも…サッカープレイヤーでもない…。』

彼の正体が、サッカー界から身を引き、もうかなり経つというのに…未だ、サッカー少年たちの間でその実力と名を噂され続けている天才プレイヤー…

元『三貴士』…十束月翔であるということくらいのものだろう。