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操り人形7 ページ9

私は伏せていた顔を上げて夏油さんを見る。



彼は見たことのない焦ったような表情をしていて。



それに誰だ、と聞かれても…




「私は堤坂Aですよ?」





私はそれ以外何でもない。嫌でも私は“私”でしかいられない。




しかし、夏油さんは手を離してはくれない。




…痛いなぁ。




夏油「君は、もっと明るい子ではなかったか?」




訝しむような顔の夏油さんにそう言われ、私はハッとする。



あ、操られてる時って、明るい子だった…!



鈴勿が明るい子が実は悪いやつだった方が面白いって言って、そういう言動をさせられていたんだった。


マズイ、普通に素で話してしまっていた。



私は慌てて、笑顔を見せる。




「ぁ………ご、ごめーん?私ちょっと体調悪くてー」



夏油「…今更意味ないと思うよ」



「………そうですよね」



「「……」」





教室のドアの前で、沈黙が落ちる。
私が何も言えずにいると、






夏油「少しあっちで話そうか」



「え」





そう言われて、ぐいと腕を引っ張られた。




それに感じたことのない程の激痛が走る。



私は声にならない悲鳴を上げて蹲った。






「〜〜っ!?」



夏油「え…」






痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い




思考が、痛いという言葉と感覚で埋め尽くされる。



夏油さんの呆然とした声など、耳に入らない。



自分の荒い息のみが聞こえるその世界で、ただただ痛みを感じていた。




その時、




「……??」




夏油「硝子に見せよう」





夏油さんに抱き上げられた。





彼は私を抱えると、教室を覗く。しかしそこには誰もおらず、教室はしんと静まり返っていた。





ああ、なんだ。今日はいなかったんだ、鈴勿。




いつもなら、私に術をかける為に早くきているのに。





なんて思っていると、頬に微風が当たる。夏油さんが、廊下を歩き始めたのだ。




……あれ、おかしいな。





私は嫌われているはず。





だって鈴勿を虐めるふりさせられたんだもの。






だから、これはおかしい。






そう思って見上げると、その視線に気がついた夏油さんがこちらを見た。






「………何で、私を抱えてるんですか…?」






私は嫌われているはずです。





そう言えば彼は目を見開いた後、再び前を向いて答えた。





夏油「……そうだとしても君は同級生だ。見捨てるほど薄情ではないよ」




「…そうですか」











そっか












嬉しいな。

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AО777 - しろりんさん» 鈴勿には事の重さを知り、後悔してもらおうと思い、このような結末になりましたがスッキリしていただけたようで何よりです!お読みいただきありがとうございました…!! (12月30日 15時) (レス) id: e34a889bc1 (このIDを非表示/違反報告)
しろりん(プロフ) - 夢主ちゃん…幸せになれて…五条くんとも順調に和解してるみたいで良かった…。🤭…鈴勿は記憶が消えなくて正解ですね…夢主ちゃんにあれだけ酷い事したんだから因果応報は当たり前だよ…後悔してるの見れて…スッキリしました…。(´o`) (12月27日 21時) (レス) id: 2a6843f9ca (このIDを非表示/違反報告)
まり - 1が読みたいです! (12月11日 23時) (レス) @page44 id: 0e8e58c55c (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん - 1が読みたいです!! (12月10日 14時) (レス) id: 43dfb5bec0 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 2が読みたいです! (12月9日 22時) (レス) @page44 id: dc2461d50b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:AO777 | 作成日時:2023年11月11日 20時

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