At that time7-14* ページ7
ー美術室ー
「……辱しめを受けた命から解放されて…ラヴィニアは幸せだったと思うかい？」
「『娘が辱しめを受けた後も生き長らえその姿を晒して悲しみを日々新たにさせてはなるまい』……でしたっけ？槙島先生」
後ろで読書をする男に声をかけた璃華子。
最近、新任したばかりの教師だ。
「美しい花もいずれは枯れて散る…それが命あるもの全ての宿命だ。ならいっそ咲き誇る姿のままに時を止めてしまいたいと思うのも無理もない話だね」
涼しげで穏やかな声が聞こえる。
本を閉じ、槙島は璃華子の背後に近付いた。
まるで彼女に問いかけるように
「…だがしかし、もし君が彼女を実の娘のように愛していたと言うのなら……君は『あの子のために流した涙で盲目になって』しまうのかな？」
「あら、それは困りますわ」
槙島の問いに璃華子は振り向いた。
先の尖った鉛筆を持って、悪魔のように微笑む。
人殺しに目覚めた少女の微笑み
「だって私、これからもっともっと新しい絵を仕上げていかなくてはならないんですもの」
そう返すと美術室に一人の女が入ってくる。
槙島と似た顔をした若い女が
「ずいぶんと面白そうな会話をしていますね、璃華子さん」
「はい、水無月先生。次の絵を仕上げようかと槙島先生と話していたんです」
「へぇ……それはそれは楽しみですね。ふふっ」
水無月も槙島と同じく涼しい顔で微笑んでいる。
殺された少女など気にもしていなかった。むしろどうでもいいと思ったぐらいだった。
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作者名：Mermaid | 作成日時：2017年7月28日 21時
