At that time 12-5* ページ44
『こちらハウンド1 誰か聞こえるか！？』
「こちらシェパード1 状況は？」
『ハウンド3を保護した。生きているのが不思議な有様だ』
征陸から告げられた情報は犯人が人質を取って逃亡中ということ。
朱がその犯人を単独で追跡していてることだった。急を要する状況に、宜野座は苦々しく吐き捨てる。
「どうやらそのクソったれなゲームとやらはまだ終わってないらしいな！」
-別の地下空間
「…ふぅ」
止血が終わり、安堵のため息を吐く征陸。
狡噛は苦しげに息をしながら、自分の状態を冷静に分析していた。
「…体が重い…自分の体じゃないみたいだ」
「弾はまだ抜いてねぇからな」
無闇に弾を抜いて、太い血管を傷つけたら狡噛の命が危ない。
プロにやってもらった方が最善である。
「常守監視官は…どこに…？」
「こっちが聞きてぇよ。俺も今すぐ嬢ちゃんを追いかける」
「俺も行く…っ」
「お前はアホか」
「だが……」
起き上がるだけでもふらついてるのに、行かせられるわけがない。
重傷の狡噛には申し訳ないが、征陸は強烈な頭突きをお見舞いした。
「くあ…っ！」
「悪いな…重傷だってのに。でもこれ以上時間の無駄はイヤなんだよ」
狡噛が重傷になるなんて滅多にない。
この状況なら朱の身も危険だろう。征陸も珍しく切羽詰まっていた。
「征陸執行官！」
「ちょうどよかった監視官！狡噛が動かないように押さえ付けといてくれ！」
痛む頭を抱えのたうち回る狡噛を見て、宜野座は少し冷静になる。
「しぶといもんだな全く…」
狡噛の近くには何か機械のような残骸が散らばっていた。
その残骸を六合塚がドローンのスキャナーで読み取る。表示された情報に動揺を見せた。
「泉宮寺豊久！？」
「泉宮寺豊久だと？」
「…誰っスかそれ」
有名人に驚く六合塚と宜野座。縢は初めて聞いた、みたいな顔をした。
泉宮寺は全身サイボーグ化の先駆者で、地下開発を進める帝都ネットワーク建設の会長だ。
厚生省の推薦ニュースでも紹介されたくらい有名である。
縢は見ていなかったようだ。
-地下通路
迷路のような地下通路を朱は歩いていた。自分の足音が反響する。
別の足音が聞こえ、そちらに目を向けると手錠で拘束されたゆきと白い髪の男が歩いていた。
「止まりなさい！！公安局です！武器を捨てて投降しなさい！」
男はゆきを盾にする。
ドミネーターを向けるとありえない音声が飛び込んできた。
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作者名：Mermaid | 作成日時：2017年7月28日 21時
