At that time 12-4* ページ43
運搬用のドローンを引き連れて、征陸と朱は狡噛を捜索していた。
周囲は薄暗く、灯りがなければ何も見えない。壁には弾痕があり、征陸は驚きの声を上げる。銃が規制されたこの時代にはありえない。
「…征陸さん！」
コンクリートの床に真新しい血痕が残っていた。誰の血かは不明だが、恐らく激しい戦闘があったのは想像できる。
ますます、朱の不安は膨れ上がった。
「誰か…！」
「ゆき！？」
「今の声は？」
「行方が分からなくなってた私の友人の声だと思います…！」
ゆきの悲痛な叫びを聞きながら階段を駆け上る。
ドミネーターをかざしながら進んでいくと、床にうつ伏せの状態で倒れている狡噛がいた。
「狡噛さん！」
征陸が狡噛を仰向けにすると、狡噛は苦しげに呻いた。
主に腹部から出血しており、顔色が悪い。明らかに重傷だった。朱は狡噛に駆け寄ってその場で膝をつく。
「お嬢ちゃん、応急処置は？」
「訓練だけは何度も…でも、実際にやったことはなくて…」
「なら俺に任せとけ」
ドローンから応急処置キットを取り出し、征陸はコートを脱ぎネクタイを外して袖を捲る。
「……る…」
「…え？」
かすれ気味の声にもう一度耳を澄ます。
狡噛は声を張って、朱に聞こえるように言葉を漏らす。
「…もう一人…い…る。お前のダチ…を…連れて…った…」
犯人はもう一人いる、という言葉に朱は目を見開く。
そのまま立ち上がり、狡噛が示す方向へと走り出した。
「何考えてるんだ！監視官！」
「まだ事件が終わってないんです！」
追いかけようとするが重傷の狡噛を置いていけない。
応急処置キットは簡易的なもので、せいぜい止血か輸血、包帯を巻くことしか出来ない。征陸はやりきれない気持ちになった。
-別の地下空間
「…まるで戦場……いや、処刑場だ…」
辺りに広がる弾痕と、誰かの血か分からない血痕。
おびただしい数に宜野座な絶句した。数十人、下手したら百人近く死んでいる。
「…大量殺人…虐殺？犯人の目的は？」
「…ゲームじゃないっスか…？この地下に来た時からずっと感じてたんスよ。対戦ゲームのステージみたいだな…って」
「…バーチャルならともかく、生きた人間を使ってゲームだと…！？」
信じられない情報に驚く宜野座に、通知音が届く。
征陸からの通信だった。
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作者名：Mermaid | 作成日時：2017年7月28日 21時
