At that time12-1* ページ40
-地下室内-
通信機で連絡を取り合った狡噛は、ゆきを置いて走り出した。
走り出した瞬間、猟犬と泉宮寺の銃弾が襲いかかる。
引き金を引く寸前に公安局のドローンが到着した。
狡噛はそのままドローンの所へ滑り込み、猟犬の攻撃を避けながらドミネーターを構える。
『対象の脅威判定が更新されました。執行モードデストロイ・デコンポーザー 対象を完全排除します ご注意下さい』
ドミネーターが形を変え、機械の猟犬を破壊する。
部品はバラバラになって床に落ちた。
安心と思った瞬間に、銃弾が肩と脇腹に命中した。
「くっ…!」
痛みを感じながら壁に隠れた。
隠れつつ泉宮寺の武器は、二連銃身の猟銃だと予測する。
遠目で見ていたAが残念そうな顔をした。
そして、兄もまた残念そうに呟く。
『…残念ながら時間切れです。妨害電波が破られました。間もなく公安局の本隊が駆けつけるでしょう』
「…ラヴクラフトがやられた。撃たれて…壊されたんだ」
『…泉宮寺さん?』
「……昔は発展途上国のインフラ設備に係わる工事が多くてね…危険な現場ほど金になった」
ぽつり、と泉宮寺が昔の話をし始めた。
それはもう、七〜八十年前のことだった。
泉宮寺は現地でゲリラの襲撃に遭った。
その当時隣にいた同僚が撃たれた。
それまで泣いたり、叫んだりしていた同僚が肉の塊になっていたのだ。
泉宮寺は、飛び散った血飛沫を頭から浴びたそうだ。
同僚の匂いが全身にべっとりと、こびりついた。
その時ほど命を、生きているという実感を痛烈に感じた。
「それを今私は再び味わっている。この機械仕掛けの心臓に熱い血の
ここで『逃げろ』
それは、今の泉宮寺にとって残酷なものだった。
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作者名:Mermaid | 作成日時:2017年7月28日 21時