At that time7-10* ページ3
―美術室―
「……失礼します」
「…来てくれたのね」
静まり返った放課後の美術室。
絵を描いていた璃華子に来訪者が訪れた。
彼女に心酔している後輩の女子生徒。
絵を見るつもりの様子のようだが
璃華子は突然話を切り出した。
絶対知らないはずの家庭事情を
「聞いたわ、あなたのお父様のこと。お母様の再婚相手」
「……気付いてて、くれてたんですか…？」
「えぇ、私はずっと葦歌さんを見ていたから」
「王凌先輩……っ」
葦歌は璃華子に促されるように、話しだした。
母が再婚してからというものの、いやらしい目付きで見られるようになった。
家に帰る度何者かが自分の部屋に入った跡が残されている。
確実にその再婚相手が犯人だ。
だが、母には相談できない理由があった。
「お母様には相談できないのね？」
「本当の父が残した借金はとても母だけでは返済しきれなくて……あの男に頼らないと…」
辛い現状が葦歌を蝕む。
いいしれない恐怖と不安がのしかかってくる。
もう泣くしか出来なかった。
「でも、先週の定期検診でもサイコパスの色相すごく曇ってて…このままじゃ私……っ」
「…辛いわね」
泣いてしまった葦歌に璃華子は優しく声をかける。
慈愛の深い瞳で、彼女に声をかけた。
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作者名：Mermaid | 作成日時：2017年7月28日 21時
