Another Story* ページ1
※王陵璃華子の事件後のお話。
-桜霜学園内
事情聴取なんて体(てい)のいい言い訳だ。突き刺さるような視線に微笑んでみせると今でも噛みつかれてしまいそうな目つきで返される。そういうところも好きだなと思えてしまう。
「慎也さん」
「…お前、何か知ってるだろ」
「もう察しがついてるんですね。流石です」
知らっばくれてみると狡噛は更に目付きを鋭くさせた。
「王陵璃華子を殺したのはお前か」
「ふふっ」
「笑ってないで答えろ」
狡噛がAを壁に押しつける。手首を掴むその手は力強いけどほんのちょっと優しい。やはり、憎みきれていないのだろう。その優しさが甘さなのだけど。
「今にも殺しそうな目をしているのに、できないんですもんね？慎也さん、私のことちゃんと好きだから」
「……」
「酷い…ここは好きって言うところじゃないんですか」
昔は渋々でも「好き」と言ってくれたのに今では黙ってばっかり。狡噛は言葉が足りない。
「それに、お前って失礼じゃないですか？こっちは慎也さんって呼んでるのに」
「ここで言う必要があるのか？俺の質問に答えろ」
「せっかちな人ですね…」
事件の真相に迫りたがるのは狡噛の癖だ。刑事だなと感心する。
「…教えません、ふふっ」
「チッ…」
きっと狡噛は色葉が犯人だと勘づいている。勘づいているが、証拠は無いし、シビュラには認識されない女だから逮捕すらできない。Aは別に狡噛になら捕まっていいとは思っているが。
「ねぇ慎也さん」
甘い声で囁き、顔を近づける。スーツ越しに触れる肢体に胸を高鳴らせた。このスーツの下には鍛え上げられた強靭な体がある。その体で抱かれることがどれだけ幸福なことか。
「前にしてから随分経ちますよね。久しぶりに会ったらなんだ体が熱くなってきちゃいました」
艶めかしい手つきでなぞると狡噛は顔を顰めた。複雑そうな顔だった。憎いのに、本能は色葉を求めている。彼も男という性(さが)からは逃れられない。以前体を重ねた記憶が蘇った。
続く
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作者名：Mermaid | 作成日時：2023年6月4日 22時
