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淡々と質問に答えていくミユンさんを呆然と見つめることしか出来ない。
彼女は一体、どれだけの重荷を1人で背負おうとしているのだろうか。
全ての批判を全部1人で受け止めるつもりなのだろうか。
『そろそろ終わるね。』
彼の言うとおり、ミユンさんが席を立つ。
そのまま去るかと思いきや、ミユンさんは真っ直ぐこちらを見た。
画面越しに、彼女と目が合う。
《あなたは、》
「ミユン、さ…」
《あなたは私が必要とする限りゴーストシンガーをやると言ったけど、それなら。》
「っ…、」
涙が頬を伝う。
《もう、あなたはいらない。》
突き放すように、
でもその中の優しさに気付けない訳もなく。
どうしてそんな事を言うのか。
それは私が、綺麗に事務所を去ることができるように。
彼女の優しさに、いつも私は守られている。
彼女はそのままカメラの前から姿を消した。
「韓国にっ…帰らせてくださいっ…」
話さなければならない人がたくさんいる。
お礼を言わなければならない人がたくさんいる。
やらないといけないことがたくさんある。
『それはできない。』
「どうしてっ…」
『今BigHitの周りをうろつけば、ゴーストシンガーだとバレてしまう。それは、ここまで必死に君の存在を隠している彼女の頑張りを無駄にすることになる。』
「でもっ、…」
『君はもう、
韓国に居場所がないんだよ。』
やけにストンと落ちてくるその言葉。
『君は今日から、ここで働くんだ。
新しい希望を持って。
もう一度、会いたい人に会うために。
進むしかないんだよ。』
その言葉にハッとする。
そうだ。きっと私には、もうここしかない。
涙を拭って呼吸を整える。
震える手で、雇用契約書にサインをした。
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あやテテ(プロフ) - なるさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!こちらこそ最後まで読んでくださってありがとうございました! (2021年12月4日 23時) (レス) @page49 id: df40273254 (このIDを非表示/違反報告)
なる - て、て、天才かと思いました!泣きながら読み終えました。ありがとう! (2021年12月4日 18時) (レス) @page49 id: 3ec18fd7b6 (このIDを非表示/違反報告)
あやテテ(プロフ) - hkhさん» 初めまして。一気読みお疲れ様でした!嬉しいお言葉ありがとうございます。画面越しに見る彼らの姿を想像しながら優しさや暖かさが伝えられたようで安心です!テテさんバージョンですね。了解です、検討します!コメントありがとうございました! (2021年5月21日 21時) (レス) id: 04319824fe (このIDを非表示/違反報告)
あやテテ(プロフ) - Rioさん» 195話は考えに考え抜いた渾身の1話だったので心に響いて良かったです…!わわ、涙を拭えずすみません…!テヒョンさんの勇姿を何とか書け、エンディングも納得のいくものだったようでたようでホッとしています。コメントありがとうございました。 (2021年5月21日 21時) (レス) id: 04319824fe (このIDを非表示/違反報告)
hkh(プロフ) - はじめまして、ちょうど完結したタイミングで出会い、一気に読み終えました。ひとつひとつ、ひとりひとりが優しくて引き込まれました…!二人ともすごく気持ちが暖かく、素敵だったので是非、是非テテバージョンも読みたいです! (2021年5月21日 0時) (レス) id: f9da484c95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやテテ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayatae00/
作成日時:2021年5月8日 0時