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躊躇わないでどうか
僕の心臓を奪って
歌い出せば先輩方のことなんか忘れてしまって。そのまま流れに身を任せた。
ミユンさんの様子を見ても安定してる。きっと大丈夫だろうと思い、最後まで歌い切った。
ﾁｬﾆｮﾙ「わぁ、すごいね！まさか俺たちの曲歌ってくれるとは思わなかった。」
ﾐﾕﾝ「折角なので。私が先輩方の曲で1番好きな曲を歌ってみました。」
柔らかく微笑んで言うミユンさんに先輩方も顔を綻ばせた。
ミユンさんの笑顔は人を惹きつける。
穏やかなその表情は誰もを虜にする。
「アヤ、ありがとう。もう帰っても大丈夫だから。」
「では失礼します。」
片付けを少しだけ手伝ってからスタジオを後にした。
ソウルの街は今日も明るい。
広告塔にある『Moon』の姿を人々が笑顔で眺める姿をぼんやりと見回した。
もしあのセンターの彼女が口パクなんだと知ったら、本当の声ではないと知ったら。ファンはどう思うのだろう。
生涯知ることもないであろうことをぼんやりと考えた。
私を捨てたあの人は『Moon』の存在を知っているだろうか。
ミユンさんの歌声に少しでも違和感を感じてくれているだろうか。
誰に尋ねたって、どんなに叫んだって出ない答えに挫けそうになるけど、それでも今は歌うしかないから。
「帰ろう。」
小さなワンルームマンション。
シャワーを浴びて、適当にご飯を作る。
どんな大きな舞台に付いて行っても私はスタッフと同じ扱い。別に不満を持つことではないけれど、少しだけ寂しいと思うことは幾度もあって。
でもそれも慣れてしまったから小さな部屋で生活する毎日も今では苦にならない。
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作者名：あやテテ
| 作成日時：2021年3月19日 17時
