風音 前編 視点:滝 ページ3
ザワザワ─────
風の吹き抜ける音。木のざわめき。
ザワザワ─────
今日は生憎の曇り空で風も強い。
こんな天気が余計に不安を煽るようだ。
あいつはずっと空を見ている。
「こら喜八郎。どこ見てるんだ、今お前のせいで皆とはぐれて───」
「はいはい。ごめんなさーい」
「...」
はぁ。今はこんなやつに構っている暇はない。
「...それにしてもここはどこなんだ?」
「知らなーい」
周りは木ばかり。水の流れる音がかすかに聞こえるだけだ。
道という道もない。山中の様だが登っているのか降りているのかすら検討がつかない。
「...今思い出したんだけどさ」
「なんだ、喜八郎」
「...なんかこの辺山荒らしが出るんじゃなかったっけ。」
「...山、荒らし」
「まぁ山賊?アジトがあるらしいよぉ」
「...山賊...?アジト...?」
「そう」
「そういうことはもっと早く言えこのアホハチロー!!!!」
「何、なんかいつもと反応違うねぇ。いつもだったら
『フン!山賊などこの平滝夜叉丸もといこの輪子の錆びとなるがいい!』とか言う癖に」
「いや、今回はお前がいるだろう?」
「...は?」
判りにくいが怒りのスイッチを押してしまったようだ。
「いやだから、お前がいるから...」
「ぼくじゃ足手まといって言うの?」
「それは違う」
「いっつも世話焼いてさ。ぼくを下に見てるの?」
「それも違う、それはお前の為に、」
「だからそれが要らないんだってば!恩着せがましいんだよ!」
胸の奥がちくりと痛む。
「なんでったってそんなにぼくに構うのさ?」
「それ、は───────」
****
─────────ともだち?
───────────うん、ぼくとたきちゃんはともだち。
─────────なんでわたしなんかと...
───────────うーん。なんとなく?
─────────...なんとなく...
───────────うん。意味なんかないよ?ともだちに意味なんかいらないもん。
─────────いらない?
──うん。ぼくはたきちゃんとともだちになりたい。だからなる。理由なんてない。
『ぼくはたきちゃんの───────────
********
「──────私はお前の、「やめて」
「え」
驚いている私をよそに喜八郎は悲しそうな顔をしていた。
「聞きたくないんだ。そんな事。言わないで。」
─────パリン。
私の心にヒビが入る音がした。
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和服教信者善法寺@保健(プロフ) - Parallel(ゾンビ)さん» (コメントありがとう私はそんなあなたが大好き) (2018年2月4日 0時) (レス) id: 108cb2d3e4 (このIDを非表示/違反報告)
Parallel(ゾンビ) - 綾滝......こころがぐしゃってされた......(とても好きですありがとうございます大好き) (2018年2月4日 0時) (レス) id: 222c42db20 (このIDを非表示/違反報告)
和服教信者善法寺@保健(プロフ) - やきもちまゆさん» わっしょい!!!! (2018年1月28日 12時) (レス) id: 108cb2d3e4 (このIDを非表示/違反報告)
やきもちまゆ - 綾滝わっしょい!!!! (2018年1月25日 23時) (レス) id: d19b1e571f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和服教信者善法寺@保健 | 作成日時:2018年1月23日 23時