36.正しさと価値観 ページ38
…
思わず同期たちのいつものノリで突っ込んでしまった事に気がつき、大袈裟なくらいの咳払いで誤魔化しておいた。
『えっと…九十九さんは、夏油のどこを見てそんな風に感じたんですか…?』
そもそも夏油といつ会ったんだ…。
不思議な箇所が多すぎて、思わず顔をしかめてしまう。
「そうだな。先ほど夏油君と話したんだが…
私は原因療法といって、根っから呪霊が生まれない世界が作りたいんだ」
ほうほう。
ちなみに、私達高専がやっているのは「対症療法」というらしい。ほーん。
「で、まあかくかくしかじかでな、
全人類が術師になれば呪いは生まれない、というような事を言ったんだ」
へえ。
かくかくしかじかのとこ全然分かんなかったけど。
「そしたら夏油君、じゃあ、非術師を皆殺しにすればいいんじゃないか、なんて言ってね」
『っな……!?それは……』
バッと立ち上がって九十九さんを見下ろす。九十九さんは片目をつむって、私を落ち着かせるように、「まあ座って」と自分の隣をポンポンと叩く。
私は言われるがままにもう一度座り直した。
『……そんなこと、夏油は言わない』
「言ったんだよ。でも、まだ自分の中の気持ちの整理がついてないようだったよ」
『あなたは、それに何て言ったんですか…?』
九十九さんは、ふむ、と両手を組んでベンチに深く腰を掛け背中を預ける。
「非術師を見下す夏油君とそれを否定する夏油君
どちらを本音にするかは、夏油君に委ねてきた」
『っそんな!?何で……!?』
何で、そんな、委ねるような。
そんなに悩んでいたのなら、正しい道を示してあげなきゃ……
「じゃあ、君は非術師を見下す夏油君を否定するのかい?それも彼なのに?」
『…ちがっ』
「一緒だよ。
…正しさや価値観は、人によって違う。自分を否定されることはストレスにしかならない。今悩んでいる夏油君に私達"呪術師としての正しさ"を説くのは間違っている。
それこそ彼はより悩んで疲弊するだろう」
言葉が、でない。
夏油を否定したい訳じゃないのに、私達が言う"正しさ"が今の夏油を否定してしまうことになるなら
無理だ。
『っ…すいません、ちょっと頭冷やします
……一人にしてください』
「…ああ。
私はもう行くよ。五条君にはあってないんだ。よろしく伝えといてくれ 」
はい
そう言おうとしたのに喉につっかかった言葉は音にならず喉の奥でかすれて消えた。
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おかず - その言葉がもらえるだけでとても幸せです😌最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年8月18日 12時) (レス) id: f2234a2195 (このIDを非表示/違反報告)
夜月陽詩(プロフ) - 面白かったです! (2022年8月17日 21時) (レス) @page46 id: 78f9c276ca (このIDを非表示/違反報告)
おかず - ありがとうございます!更新頑張ります!引き続き小学生五条をお楽しみください(笑) (2022年8月8日 16時) (レス) id: f2234a2195 (このIDを非表示/違反報告)
夜月陽詩(プロフ) - この作品が大好きです!五条さんが小学生みたいなことやってるのが特に好きです。更新頑張ってください!続き読ませてください!お願いします! (2022年8月7日 23時) (レス) @page30 id: 78f9c276ca (このIDを非表示/違反報告)
おかず - ありがとうございますm(_ _)mそう言っていただけると嬉しいです! (2022年7月29日 19時) (レス) id: f2234a2195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おかず | 作成日時:2022年6月17日 22時