愛に囚われて Ⅲ (ページ42)

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ｰチャニョルｰ

ｼﾞｭﾉ「っ…いってぇな…、」

ありったけの力で先輩を押し返す。

暴力なんて、振るわない。
そんな勇気も力も持ち合わせていない。

でも、これで、今ので全部はっきりした。

ｼﾞｭﾉ「お前…ふざけんなよ、誰に何したか分かってんだろうな。」

わかってる。

SMの看板アイドルを、大先輩を押し返した。

「俺は、アヤのそういう顔は知らない。」

ｼﾞｭﾉ「はあ？何言ってんの。」

「でも分かる。

俺はジュノ先輩より、何倍も彼女を幸せに出来る。」

ｼﾞｭﾉ「…お前っ、」

目を閉じれば、色んな表情をしたアヤが思い浮かぶ。

転校してきて、俺たちの前で挨拶した時のアヤ

学生時代の不安げな表情、

チャニョル君、と柔らかく呼んでくれたときの顔

泣きながら俺に助けを求めてきた時

チャニョル君には分からないよ、と苦しそうな顔

ごめんねと流れた涙

「俺はきっと、先輩ほどアヤのことを知らない。」

でもひとつ、確かなことがある。

「ジュノ先輩、アヤの笑顔を知ってますか？」

ｼﾞｭﾉ「…っ、」

俺は知ってる。

照れたように顔を背けて笑う顔も

クスリと小さく笑う顔も

安心して穏やかに微笑む顔も

「泣き顔しか見たことないなんて、可哀想ですね。」

ｼﾞｭﾉ「っ…てめぇ…」

傷付けてばかりのあなたにはきっとわからないだろう。

「先輩、もうアヤはあなたの道具じゃない。」

仕事を奪うなり、暴力を振るうなり。
好きなことをすれば良い。

でも俺は、俺たちは。

絶対に。

「先輩のアヤへの思いは愛じゃない。」

彼女の手を離さない。

「アヤを本当に愛してるのは俺だ。」

ｼﾞｭﾉ「ふざけんなっ…！」

ジュノ先輩が俺に掴みかかる。

抵抗をする気は無い。
というより出来ない。

そういうスキルは持ってないから。

ねぇ、アヤ。

君はきっと泣いてしまうかもしれないけど。

帰ったら優しく抱き締めて。

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