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「来たら分かると言われたんですけど…。」
『ユアさんが？こちらは何も聞いてませんけど。』
「…聞き間違えたみたいです。すみませんでした。」
怪訝な顔をするスタッフ達にアヤは頭を下げてその場を去った。
つまり、自分はユアさんにただ追い出されただけなのだと。
ようやくそんなことに気付いた。
「…どうしようかな。」
そのまま練習室に戻ることだってできた。
むしろ何もなかったかのように、静かに戻って、存在を消した方が、きっと良い。
でも、何故か足が進まない。
ユアさんに笑いかけるチャニョルが頭に浮かぶ。
一丁前にヤキモチを焼いているのだろうか。
アヤはその可能性に酷く呆れた。
その域まで近付いていい相手ではないのに。
「階段…？」
色々なことを考えながら歩いていたからか、気付けば階段が目の前にある。
どこまで続くのだろうと一歩足を踏み出してみる。
トントンと鳴り響く自分の足音。
先の見えない暗闇をただ、登り続けた。
「行き止まり…。」
かなり長いことここでは働いているけれど、こんなところに来たのは初めてだった。
アヤは目の前の扉を開ける。すると。
「屋上…」
青い空が大きく広がる屋上があった。
1歩踏み出せば澄んだ空気が体内に取り込まれる。
大きく深呼吸をしたその時。
SE「目を離したらすぐどっか行くんですね。」
「っ、…セフンさん、」
SE「ユアヌナに何か言われました？」
「…いえ。勘違いだったみたいです。」
SE「……御手洗、行きました？」
「はい…？」
セフンの突拍子もない言葉に思わず聞き返す。
何故そんなことを聞くのだろうと。
「行ってませんけど…。」
SE「行くって言ったのに？」
「え…？」
彼が何を言っているのか。アヤには全く分からず首を傾げる。
果たして自分はいつ、御手洗に行くと言ったのだろうか。
意味が分からず固まっていると、彼は小さくため息を吐いた。
SE「…やっぱり。」
「え？」
SE「どこにいても嫉妬の対象になるんですね。」
「え…？」
ふわりと微笑んだ彼にドキンと心臓が波打つ。
顔の綺麗な人にそんな風に微笑まれたら心臓に悪い。
SE「いえ、こっちの話です。」
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作者名：あやテテ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayatae00/
作成日時：2021年6月18日 23時
