愛に囚われて Ⅲ (ページ26)

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「ジュノさんっ、」

ｼﾞｭﾉ「あ？なんだよ。」

「いつから…寝てないの？」

ｼﾞｭﾉ「覚えてない。」

「体壊すから…ちゃんと寝て…」

ジュノの元に戻って数週間。

明らかにジュノがおかしいとアヤは気付いていた。

寝ていない日が続き、顔色は悪く。

おそらく撮影もそのせいであまりうまくいっていない。

うまくいかないことが積み重なるとアヤに当たり、そして寝ることすらしない。

やっとオフの日ができたかと思えば、大量の睡眠薬を飲み、仕事のギリギリまで目を覚まさない。
少しずつ、彼が弱っていっている、そんな気がした。

そして、そんな生活を続けていたからか。

彼はもう、睡眠薬を手放せなくなっていた。

ｼﾞｭﾉ「アヤ、薬は。」

「もうないよ…、ねぇ、ちゃんと用量守って使わないと…、」

ｼﾞｭﾉ「うるさい！口出しすんなっ…！」

「っ、」

睡眠薬が切れると平常心を失い、アヤに手をあげるようになった。

それでも何とか耐えていたけど、ついに。

ﾘﾂ「アヤ、その目…、」

「…なんともないよ。大丈夫。」

ﾘﾂ「ジュノか？」

「大丈夫だから…、」

ﾘﾂ「あいつさすがにやりすぎだよ。

お前、いつか死ぬぞ。」

仕事が一段落ついたリツが一日だけ宿舎に戻り、ジュノの様子に目を見開く。

ﾘﾂ「明日、病院連れていけ。」

「そんなのっ、」

ﾘﾂ「俺から言うから。精神科連れ行け。

じゃないと…お前も、ジュノも壊れる。」

その言葉を置いて、リツはジュノの元へ向かった。

ﾘﾂ「ジュノっ、聞けってば！！」

ｼﾞｭﾉ「うるせえよ！お前には関係ないだろ！」

怒鳴り声が響き、アヤは震える。

この二人のけんかを鎮められる人なんて、いないのに。

ﾘﾂ「やめろっ、…っ、落ち着けって…、」

ドンッ、と鈍い音がして背筋が凍る。

遂に、ジュノがリツを殴ったのだろう。

それからしばらく沈黙が続き。

戻ってきたリツは口元に傷を作っていた。

ﾘﾂ「…アヤ。明日頼んだぞ。」

「リツさんっ、」

ﾘﾂ「俺は大丈夫だから。

…だから、泣くな。」

ポロっと流れた涙をリツはそっと拭う。

今まで、ジュノがリツに手をあげることはなかった。

壊れだしている。
崩れ出している。

アヤはそれを悟った。

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