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『骨に異常は見られませんでした。ただ、打撲がかなり目立ちますね…。
腹部もここまでだと相当痛いでしょう？
よく歩けましたね。』
「…いえ、何とか…。」
そう、アヤの怪我は顔や腕、肩だけではなかった。
お腹、胸元、足。全身に打撲痕が見られた。
そしてアヤはそれをメンバーにはずっと隠していた。
痛みに耐えるのは慣れている。
おかげできっと、誰にもバレていないだろう。
『生命の危機に瀕するほどではありませんが…絶対安静で無理をなさらず過ごしてください。』
「はい。」
手厚い処置を受けて病院を出るころにはお昼を過ぎていた。
病院の自動ドアから外に出るとふわりと風が頬を撫でる。
見渡せば野原のように緑が広がる地面。
そこには老若男女問わず、看護師さんや家族と一緒にいる患者さんの笑顔で溢れていた。
「っ…タクシー乗り場…どこかな。」
人の笑顔を見て、自分も笑顔になる。
それが理想で当たり前なのに。
どうしても笑顔になれなかった。
苦しくて、堪らなかった。
「っ…」
1歩歩く度、つうっと頬に涙が伝う。
助けてくれた人がいる。
それはすごくありがたいことで、感謝しないといけないことは十分分かっていた。
なのに、どこか胸にぽっかりと穴が空いたような感覚に陥る。
「…っ、」
今、自分は誰を求めてるのか。
アヤ自身はっきりと分からなかった。
だけど。
「っ……どうしてっ…、」
SE「…あなたが、泣いてる気がして。」
タクシー乗り場で待っていたその人を見つけて、
酷く安心したのもまた、事実だった。
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作者名：あやテテ
| 作成日時：2021年5月29日 6時
